―ストロング缶でしか酔えなくなくなりました。(H・Mさん)

度数の高いお酒を欲するようになってきたら、お酒に依存し始めているので、「まずいな」と思ってほしいです。身体への影響面では度数は関係なく、トータルのアルコール摂取量が問題になってきます。度数の低いお酒では満足できなくなり、度数の高いものを飲むようになってきたら依存症のリスクが高まっていることを自覚してください。目的が、本来の「おいしいから飲む」から、「酔うために飲む」へ変わってきたら注意が必要です。

 

「若い人たちのお酒離れが進んでいる」とはいえ、お酒と大学生は切っても切れない関係だ。

 

―飲酒が身体に良い影響を与えることはないのですか。(K・Sさん)

あります。適度な飲酒は動脈硬化を予防し、血液をさらさらにする効果があるほか、認知症や糖尿病の発症も予防します。お酒はタバコなどと違い、健康面でもメリットのある嗜好品ですので、リスクを理解した上で適度な量で付き合ってもらえればと思います。

 

―私は女性ですが、気を付けなければならないことはありますか。(M・Kさん)

いくつかあります。小柄な女性は肝臓が小さく、血中アルコール濃度が上がりやすく下がりにくいため、実は男性に比べて酔いがひどくなりやすいです。さらに、ホルモンなどの関係で、男性より少量のアルコールでも肝障害が生じやすいといわれています。また、母親の妊娠中の飲酒は胎児性アルコール症候群という障害を胎児に与えてしまうので、絶対にしてはいけません。

 

―先生が思う正しい飲酒法を聞かせてください。(聞き手)

まずは、未成年飲酒は絶対にあってはなりません。20代の飲酒は車でいうところの初心者マークです。免許を持ったからといって時速200㌔出して良いわけではありませんよね。量を飲めるのが良い酒飲みだと思われがちですが、お酒の持つ魅力を楽しみながら、問題行動を起こさないように、健康的に長く付き合える人がスマートドリンカーだと思います。

 

【プロフィール】

真栄里 仁(まえさと ひとし)

平成8年群馬大学卒業、同年沖縄県立中部病院卒後臨床研修入職、平成10年琉球大学医学部精神科入局、平成12年沖縄県立宮古病院精神科赴任、平成15年国立久里浜病院(現、久里浜医療センター)赴任、平成24年より教育情報部長。平成29年より依存症対策全国センター事務局長。
主にアルコールに関連した分野に携わってきました。臨床では高齢アルコール依存症、中年男性アルコール依存症、医療観察法病棟、女性アルコール依存症を経て、現在はアルコール・精神デイケア、復職支援プログラムを担当しております。研究では大量飲酒者への減酒指導、アルコール政策、災害とアルコールを主なテーマとしており、鳥取大学医学部環境予防医学教室の現役の大学院生でもあります。また依存症対策全国拠点機関運営事業、アルコール関連の各種学会学術集会、医療職向け各種研修等での事務局を担当しています。