「する」「観る」「支える」 。スポーツへの関わり方は様々だ。現代のテクノロジーは、様々な理想や目標を達成する一つの手段としてスポーツと結びつき、「スポーツテック(Sports-Tech)」と呼ばれている。

1964年の東京オリンピック前大会と現在のスポーツ業界における大きな違いは、進化を続けるテクノロジーが導入されていることだ。テクノロジーがどのように今日のスポーツと関わっているのか。慶大大学院システムデザイン・マネジメント研究科の神武直彦教授に話を聞いた。

技術を用いて、スポーツの質をさらに高めようとする動きはどの時代にもあった。今日スポーツテックが特別注目されている要因は主に三つあると神武教授は考える。一つ目はテクノロジーのコモディティ化である。誰もが専門的な機能を用い、ある程度の分析をすることが可能である。二つ目に技術が高機能化していることだ。短期間で効率的に効果を期待できるようになった。三つ目はテクノロジーの再現性である。つまり、いつでもどこでも、その技術の効果を享受できる。
スポーツテックの例として、GPS受信機を活用した取り組みがある。ラグビー日本代表はユニフォームの肩甲骨付近の内側にGPS受信機を装着し、運動距離や加速回数といった、各選手のデータを記録、分析し、活用するシステムを導入している。
またスマートフォンで競技中のフォームを取り、映像を見て自己分析を行うことも最新テクノロジーの享受といえる。
スポーツテックの市場規模は拡大している。神武教授によれば、いずれこのテクノロジーは大衆化し、スポーツのみならず、他の分野でも活用が進んでいくという。自分の生活、地域、そして日本を豊かにする手段となっていくのだ。

そして、半年後に迫った東京五輪ではどのような変化がもたらされるだろうか。スポーツを「観る」人に向けて、スポーツ観戦という体験の価値を上げるべくサービスが向上することは間違いないという。また、スポーツを「する」人にとっては、スキルやフィジカル強化に留まらず、チームメイトやコーチとのコミュニケーションを円滑にする手段になり、チーム力強化に繋がるだろう。
このように多くのメリットがある一方で、スポーツテックではデータを大量に保持するため、適切に管理できないと選手や観客などのプライバシーを侵害する可能性もある。テクノロジーリテラシーを個人や組織で高める努力も必要だ。
スポーツを通し私たちは多くのことを学ぶことができる。今後もスポーツを支えていくであろうテクノロジーは更に身近になっていくはずだ。しかし、テクノロジーに潜む危険性も理解したうえで、上手く活用する工夫が必要であろう。
(河野優梨花)