《台風19号特集》意識改革が防災への一歩

環境情報学部 宮本佳明 専任講師

私たちは台風19号から何を学び、どのような対策をとればよいのか。気象学と都市防災の観点からみた台風19号について、環境情報学部の宮本佳明専任講師に話を聞いた。

都市防災と住民の意識

大雨による浸水の被害を減らすためには、いくつかの対策が考えられる。

根本的な解決策として、「都市の構造、街の構造を変える」方法がある。堤防の高さや排水システムの見直しといった大々的なインフラ整備には、莫大な時間と費用がかかるという問題点がある。

現実的な対策としては、行政が中心となり、早期から警戒を呼び掛けることが挙げられる。今回話題になったダムの放流などは、その良い例だ。今後、数日前から雨量を予測できるようになれば、「多量の雨が降るから、ダムを空にしよう」という指示も出すことができるようになるだろう。

最も効果的で、幅広い場面で応用がきくのは、「住民の意識の改革」である。今回の台風19号についていえば、1カ月前に台風15号が猛威を振るったことで、住民の避難がスムーズに進んだ。基本的に避難所は、よほどのことがない限り安全な場所に設けられている。避難所へのアクセスは不便なことが多いが、家に留まるよりも安全性を確保できる。

街の構造を変えるのは大変だが、人々の意識を変えることは簡単にできるのだ。

天気予報と台風防災

台風情報というと、進路予想図をよく目にするだろう。この予想図を見る時は、赤い円と黄色い円に注目したい。

赤い円は、風速25メートル以上の暴風が吹く暴風域だ。この中に入ると、人間が立っていられないほどの風が吹く。台風15号で屋根が吹き飛ばされたエリアでは、このレベルの風が襲った。「風速25メートル以上」、「暴風」という言葉に気をつけ、暴風域に入ったら室内で待機するのがよい。

黄色い円は強風域を示しており、風速は15メートル以上になる。傘が差せない、もしくは傘を差しても濡れてしまうくらいの強さの風だ。強風により、木が倒れそうなほど大きく揺れ、自転車が倒れる被害も予想される。

今日では予報精度の向上に伴い、「いつ・どの地域が危険か」という予測に合わせて、気象庁の警戒レベルの設定や自治体の避難勧告が行われる。身の安全のために、これらの情報が発令されたら、従うようにしたい。ただし、万一逃げ遅れてしまった場合には、屋外への避難は取りやめ、2階に避難したり、崖の反対側の部屋に退避したりと、家の中で最も安全な場所へ移動するのがよい。

進路図のチェックポイント

慶大と防災

現在、SFCでは休校基準や避難に関する情報発信の在り方を研究している。多くのSFC生が利用しているSNSを駆使して粘り強く情報を流すことが有効だろう。

また、有事の際にはSFC内の無線LANに接続している人数をカウントすることで、「キャンパス内のどのエリアに、どのくらいの人が残っているのか」を把握するというアプローチも提案されている。

今後の災害における避難

昔ながらの「地域をあげた避難」がベストである。互いに声をかけ合うことで、「一緒に避難しよう」と思える状態を作るのが望ましい。とはいえ、いざ避難を求められると、抵抗感を示す人が一定数いるのも事実である。

そのため、日頃から地域避難訓練を実施し、「避難所を身近にする」ことが重要である。特に都心在住の人は、避難所の場所や行き方を知らない人が多いだろう。純粋な動機でなくても構わないから、まずは一度避難所に足を運んでみよう。こうして避難のイメージを固めておけば、いざというときに避難を決断しやすくなる。また、訓練を通して地域の人とコミュニケーションを取れるという点でも、地域避難訓練は有用である。

 

(塚原千智)