「AI」「演劇」

この一見相いれない両者を融合するという発想から生まれたのが、演劇台本演劇作成台本A.I.。先日、東京ミッドタウン日比谷では、AIが台本を作成するというイベントが開催され話題を呼んだ。

そこで、このイベントを企画した三井不動産日比谷街づくり推進部の松岡里沙さんに話を聞いた。

 

演劇台本作成A.I.とは、主な12のストーリーと細かな情景の違いにより、お客さん一人一人に合わせた、お客さんが主役の物語を作るイベントである。

まず、お客さんはタブレット端末に自分の年齢、性別を入力、さらにはAIが声や顔の表情を分析し、好きな決め台詞を選ぶ。すると、そこから読み取った感情をAIが「喜」「怒」「悲」の三つに分け、それぞれの感情の大きさを分析することで自分だけのストーリーと、それに合わせた題名を作り出す。

しかし、このストーリーや題名には意味が不明瞭な部分も多い。例えば、「ねじろのゴリラ」や「あたいの宇宙」といった題名がある。

松岡さんは「このようなところからまだまだAIも完璧でないことが分かりますし、そういう部分もお客様に楽しんでいただけたら」と話す。

また、ストーリーだけでなく、演劇台本の表紙もNECの技術協力により唯一無二のものが作られる。このデザインは目の虹彩データを模様に変換したものの一部分であり、入力された性別や感情によって色が変わる。

 

今回開催されたイベントは、劇場や映画館が多く存在し、芸術文化の街として発展してきた日比谷で、新しい形で観劇に触れる機会の創出を主眼としている。

無料で行うことで、普段観劇をしない人に向け観劇のハードルを下げることが狙いだ。演劇とAIという全く異なるものを組み合わせることで、幅広い年齢層の人の参加につながったという。

イベントに参加した人の中には、何度も声や表情を変えて楽しむ人や友人とシェアして楽しむ人もいたとのことだ。演劇台本作成A.I.を体験した俳優から、実際にこの台本を演じてみたいという声もあったそうだ。

今後は今回取得したデータを活用し、実際にアクターに演じてもらうなど、新しいイベントを検討中とのこと。

 

AIと聞くと、ついビジネスシーンを想像しがちだ。しかしこの企画のように、芸術分野でAIが活躍する日は近いのかもしれない。

 

(蠣崎 みなみ)