台風24号が関東を襲った9月30日、JR東日本をはじめとする多くの鉄道会社は、首都圏初の「計画運休」を実施した。関西ではすでに複数回行われてきたが、計画運休は今後首都圏でスタンダードになりうるのか。関西大社会安全学部社会安全研究科の林能成教授に話を聞いた。

台風などで風速や雨量がある一定基準を超えると、線路上の風力計や雨量計などのセンサーが作動し、電車は止まる。計画運休とは、センサーが作動すると予測できる場合に、事前に電車を止めることである。

計画運休を行うことで、車中閉じ込めをはじめとする旅客の足止めを回避し、台風通過後には早期復旧が可能になる。一方で、天候の見極めを誤り、本来動かせた電車を動かせないというリスクもあると林教授は語る。

計画運休は、災害が起きることを見越してあらかじめ対応を決める「タイムライン(事前防災行動計画)」の考え方に基づく。2005年にアメリカでハリケーン・カトリーナが上陸した際、事前の防災対策が不足していたために、甚大な被害が生じた。これを機に、災害発生の前後に時間ごとの行動を策定する重要性が認識されるようになった。

日本でも2014年ごろからタイムライン防災への検討が始まった。同年、台風19号の接近に伴い、JR西日本が初めて計画運休を実施した。今回、首都圏で計画運休が行われたのも、関西での前例があったことが背景の一つではないかと林教授は分析している。

今後、首都圏での計画運休は広まっていくだろうか。林教授は「計画運休が普及するにはどのタイミングで運休を告知するのか、どの基準で電車を止めるのかを検討していく必要がある」と話す。首都圏で行われた計画運休の告知は当日だった。旅客が台風接近時の行動の意思決定をする前に告知するためにも、理想的なのは前日の午後までだという。事前にわかれば、台風が来る前に仕事を片付けておくなど、どう行動すればいいのか、自主的に考えることができる。また、車両に閉じ込められたり足止めを食らったりする事態も回避できる。

現在障害となっているのは各鉄道会社間の意識の違いだ。実際、今回の運休時も対応の違いは見られた。林教授は鉄道会社間での横並び感が大切だと話す。会社間で運休判断を調整するか、どこか一社が先行する必要がある。

計画運休が首都圏になじむまでまだまだ時間はかかりそうだ。しかし、状況が悪化してから慌て始めるのではなく、前もって対策を始め、無理に出かけない選択をすることで、後悔を少しでもなくすことができるかもしれない。計画運休はその一つの指針となるのではないだろうか。

(藤田龍太朗)