教職課程センター公開研究会「子どもの貧困にむきあう」が先月12日、三田キャンパス北館ホールで開催された。NPO法人「こどもの里」理事長である荘保共子さんが招かれ、日本の子どもの貧困について考える会となった。

第1部では、ドキュメンタリー映画『さとにきたらええやん』が上映された。舞台となった「こどもの里」は、日雇い労働の街、大阪市西成区あいりん地区(旧:釜ヶ崎)にある。虐待、貧困、不登校などに悩まされる子どもの緊急避難所として、障害の有無や国籍に関わらず、0歳からおよそ20歳までの子どもたちを受け入れる。学校帰りの遊び場としてだけでなく、一時宿泊もできる。学校のない土日祝日も開館しており、大勢の子どもたちでにぎわう。加えて、里は子どもの居場所を提供するだけでなく、親の生活や教育の相談にも随時応じる。そんな里での荘保さんを中心としたスタッフの温かさと子どもたちが伸び伸びと成長していく様子が描写された映画であった。

第2部では荘保さんの講演が行われ、「こどもの里」での39年の実践から、子どもの遊びと学びと暮らしの居場所について語られた。子どもの貧困とは、ユニセフ協会が掲げる、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利の四つの子どもの権利が守られていない状態である。これは子どもの親が怠惰に過ごした結果によって生じたのではなく、社会の環境と構造に原因があり、社会的貧困といえる。親が子どもを育てられない際に、児童相談所に一時保護される現象は子どもにとっては「見捨てられたこと」であり、そうした場合は地域が保護すべきだと強調した。また荘保さんは、39歳以下の日本人の死因は、自死が第1位であることについても触れた。その上で、子どもの居場所は「いのちの現場」であり、「いかに自己肯定感を育むことができるか」が鍵を握っていると訴え、会を終えた。