1936年に帝国議会議事堂として完成した国会議事堂は太平洋戦争の惨禍を免れ現在までその姿をとどめている。

日本の立法府を収めるこの建物の中には、日夜公務に励む国会議員たちを支える食堂が存在する。参議院食堂はその一つだ。通常の国会見学ではまず入ることが許されないこの場所には、いったいどのような食べ物が並ぶのだろうか。

広報課の方に連れられ、食堂に足を踏み入れた私達の目にまず飛び込んできたのはショーケースに入った食品サンプルだ。丼ものなどよく目にする食べ物が時間を止めた姿で整列している。ほっと胸をなでおろしたのもつかの間、左に向き直るとそこには豪華にしつらえられた室内が。参議院食堂には日本食を提供する「初花」と洋食を提供する「レストランモア」が入っており、それぞれのカウンターが四角い食堂の一辺ずつを占めている。

今回私達は数あるメニューの中から「特上握り」、「国会上カレー」、「ナポリタン」と「クリームソーダ」をチョイスした。

会計を済ませてテーブルに着くと「議員席」と書かれた札と見慣れたタバスコ、粉チーズの容器が載っていた。アンバランスな組み合わせに面食らっていると早速登場してきたのはナポリタン。 620円とは思えないボリュームだ。気になる味はというと、素朴で懐かしい感じがするとのこと。実はこのとき一緒にクリームソーダも来ていたのだが、目を離しているうちに気分を損ねたのかオーバーフロー。出鼻をくじかれる形となった。

続いて登場したのは記者が注文した特上握りだ。マグロ、ウニ、海老など豪華なネタが並ぶが、値段は1500円と低く抑えられている。なかなかお目にかかれない海の幸に自然と顔がほころんだ。

最後にやってきたのは「国会上カレー」だ。23種類の野菜ジュースとたまねぎ、和牛を使って作られるカレーはアホエンオイル(にんにくのエキスを溶出させたオリーブオイル)を滴下して食べることでアンチエイジングにも効果があるそう。ルーの奥深い甘さとにんにくの香りが食欲をそそる逸品だ。名前にある「上」はカレーにかける生卵がついていることを表している。

食堂内には透明な間仕切りで囲われた一角があった。気になって尋ねると喫煙者のための席であるとのこと。国会内の喫煙所も徐々にその数を減らしているらしい。国民の代表が集う国会にあっても喫煙者への風当たりは強かった。

国会内の食堂ということで高額なメニューばかりが並ぶイメージがあったが、その実態は意外にも庶民的なものだった。これを読んでいる皆さんも入場を許可された際にはぜひ実食してみることをおすすめする。くれぐれもクリームソーダにはご注意を。
(田島健志)