【特集】秋の夜長 何をする?

長い夏休みは終わり、暑さも和らぐ今日この頃。食欲の秋、スポーツの秋…。さまざまなことに挑戦したくなる季節だ。弊紙でも塾生諸君が秋の夜を楽しめそうなものを紹介する。読者方の実りに役立てば幸いである。

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学部長に聞く 読んで欲しい一冊 前編

涼しい秋の夜長は読書をするにうってつけだ。そこで、塾生新聞は慶應義塾大学の各学部の学部長に、読書の秋に学部生へ推薦する一冊を選んで頂いた。今月号と来月号の二回に分けて紹介していく。今回は医学部・経済学部・商学部・法学部・薬学部(五十音順)である。質問内容は以下の通り。
①推薦の理由②本の中の好きな一節③本のキャッチコピー
(菊田航、山本理恵子)

医 岡野栄之学部長
「DNA: The Secret of Life」 ames D. Watson著 Arrow books

①DNA二重らせんモデルの提唱者のJames D Watson博士が、DNA二重らせんモデルに始まる分子生物学の発展が、医学・生命科学のみならず民族学、倫理学、食料品、犯罪捜査、司法判断、保険など社会問題まで含むあらゆるジャンルに如何に大きな影響を与えたかをウィットに富んだ文体で判り易く語りかけてくれる、圧巻の一冊。
②It is our DNA that distinguishes us from all other species, and that makes us creative, conscious, dominant, destructive creatures that we are. (中略) The first fifty years of DNA revolution witnessed a great deal remarkable scientific progress as well as the initial application of that progress to human problems.
③生命現象の鍵を握るDNA二重らせんの研究が如何に科学を、社会を、そして世界を変えたかについて、ノーベル賞受賞者のJames D Watson博士が判り易く語りかけます。理系・文系を問わず、すべての学部生に原著で読んでいただきたい一冊です。

経済 中村慎助学部長
「一般均衡分析」 ケネス・アロー、フランク・ハーン著 福岡正夫、川又邦雄訳 岩波書店

①応用経済学の時代と言われて久しい。しかしながらその基礎に堅固な理論モデルを持つことが経済学を科学としている。経済分析においてモデルが必要なことには、経済現象がそのまま分析するには複雑過ぎることもあるが、因果関係を明らかにするといった理由もある。例えば複数種類の経済データが与えられた時に、どちらが原因でどちらが結果であるかは理論分析を待たなければならない。本書が出版された1970年代は市場メカニズムを中心とする現代経済学の理論体系が確立した時代と言って良いであろう。本書はその一つの金字塔である。
②序説に続く本書第2章の冒頭に引用されているハムレットの〝 To be or not to be: That is the question: 〟「在るか在らぬかそれが問題だ」(福岡・川又訳)。これはモデルの論理的整合性を保証する均衡の存在が、本書の最初にして最も重要な問題であることを表している。現代の経済学者が共通に持つ「経済学的 な考え方」を純粋な形で表現しており、一度は手に取るべきと考える。
③現代経済学の臍として一度はトライしたい。

薬 杉本芳一学部長
「吉田肉腫・腹水肝癌と癌の化学療法」 吉田富三著 形成社

①この本は、吉田富三医学論文集の三冊のうちの一冊にあたる。三冊ともおすすめしたい。吉田博士は、移植性腫瘍モデルを確立した、癌の化学療法(薬物療法)の生みの親とも言える人物。博士は、癌の化学療法の研究には医学と薬学の研究者が同じ建物の中でいっしょに研究をすることが重要であるとの考えで、癌研に癌化学療法センターを設立した。私は癌の化学療法の研究を始めた最初の頃にこの本に出会い、ずっとこの道を歩んできた。これから薬学の研究者をめざす学生に、ぜひ読んで欲しい。
②一節ではないが、同書の「二つの問題」では、現在の癌研究の中心的課題に位置する癌の個性、heterogeneity、薬剤抵抗性などが、病理学者の目で、わかりやすくかつ的確に論じられている。また、「作業仮説と実験」には、若い研究者に向っての多くのメッセージが詰まっている。
③私の部屋には漫画の伝記もありますよ。興味があればどちらでも。

商 榊原研互学部長
「職業としての学問」 マックス・ウェーバー著 尾高邦雄訳 岩波文庫

①二〇世紀の偉大な社会学者、マックス・ウェーバーが、第一次世界大戦の混乱のなかでドイツの若者に向けて行った講演の記録である。生きる指針を模索し、その答を学問に求めようとする人々に対して、ウェーバーはきっぱりと言う。学者は予言者でも救世主でもない、と。そして自らを内側から律する守護霊(デーモン)を見出せという。つまり人に頼らず自分自身で考えろということである。本書は学問する意味とは何かを考えさせてくれる。学問を職業としない人でも大学に身を置く者ならば一度は読んでおきたい古典である。
②「人間としての自覚あるものにとって、情熱なしになしうるすべては、無価値である。」
「学問の領域で『個性』をもつのは、その個性ではなくて、その仕事(ザッヘ)に仕える人のみである。」
「自己を滅しておのれの課題に専心する人こそ、かえってその仕事の価値の増大とともにその名を高める結果となるであろう。」
「いたずらに待ちこがれているだけではなにごともなされない。こうした態度を改めて、自分の仕事に就き、そして『日々の要求』に従おう。」
③学問する意味とは何か?

法 岩谷十郎学部長
「ソクラテスのカフェ」 マルク・ソーテ著、堀内ゆかり訳 紀伊国屋書店

①日頃、難しい法律用語や複雑な政治学の専門書に苦しめられている(?)法学部の学生諸君に読書の枠を広げて欲しいという気持ちから選んだ。哲学をテーマとしながらも、他者と対話して自分の頭で考え続けることの重要性が示唆される本である。手垢のついた解決策に安易に飛びつくのではなく、事柄の根源に遡って真摯に誠実に考え抜くことが、自己を、そして他者を、本当の意味で豊かにする、ということが示されている。
②「そもそも、誰かが私の代わりに考えてくれるのなら、『私』はいったい何者なのだろうか?もし思考する主体でないならば私は誰なのか?ただの物でしかなかろう。」(※引用にあたって文章の表現に変更あり。)
③鞄に入れてカフェにでかけたくなる一冊。


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さあ、星空の下へ

星の魅力を語る新宿健さん(理3)
星の魅力を語る新宿健さん(理3)

秋晴れの空は、空気が澄んで心地良い。夜には星がよく見える。10月から11月にかけては流星群も多く、秋は星空観察に最適な季節だ。では、本当に綺麗な星はどこで観測できるのだろう。

星を見る場所として好ましいのは、やはり街から離れた山の中である。都市部では街明かりに加え舞い上がった塵のため、星が見えにくくなる。慶應義塾大学天文研究会の新宿健さん(理3)は、観察活動の際は都心のキャンパスから離れた場所を選ぶそうだ。

新宿さんが初めての観察で勧めるのは、熱海から伊豆を走る観光道路である伊豆スカイラインや、清里・野辺山エリアだ。車の場合パーキングエリアなどに車を停め、1時間ほど星を眺めるだけでも十分に満足できる。

また、観察場所を探すには、画像検索から絞るという方法もある。大まかな目的地名の後空白を挟み「天の川」と入力し、気に入った写真が見つかればその撮影場所に行ってみるのである。

天文研究会所属の村澤昂樹さん(理3)撮影
天文研究会所属の村澤昂樹さん(理3)撮影

星空の楽しみ方はさまざまだ。空を見にカップルで訪れたらデートスポットとしても楽しめる。カメラ好きなら写真撮影もいいだろう。新宿さんは「一眼タイプのカメラを持っている方は、とりあえず行って空に向かってシャッターを押してみてください。加工しなくても綺麗な写真がとれてしまいます」と勧める。

観察の計画を立てるときに注意すべきは、月の満ち欠けだ。月が明るすぎるとほかの淡い光の星が見えなくなってしまうため、観察するなら新月から前後5日が望ましい。

防寒にも万全の対策が必要だ。標高が高く寒い場所で動かずに観測する上、見通しのいいところには風も強く吹きつける。「10月中旬であればスキーウェアくらいで頑張れるが、11月に入るとそれ以上の対策が必要」との経験談も話してくれた。

例えばジャケットと風よけのレインコートの重ね着や、分厚い手袋・靴下の着用によってある程度の寒さを防げる。とはいえ、11月半ば以降の寒さは厳しく観察は避けるべきだという。

「普段とは全く違う時間、場所、雰囲気の中で過ごすのが楽しい」と星を見る魅力を語る新宿さん。「秋でも見ることが出来るので、天の川を見たことがない人にはぜひ一度見てほしい」

いくつか注意点を守れば、星を見に行くことのハードルは高くない。伊豆なら温泉に入った後に星を見るなどという贅沢もできそうだ。流星を見るチャンスも多いこの秋、星空観察に出掛けてみてはいかがだろうか。
(青木理佳)


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