慶大医学部は、来年度の一般入試の成績上位者10人を対象に、年間200万円の奨学金を4年間にわたって給付する制度を来年から導入する。私立大の医学部の学費は国立大より高い。そのため、経済的な支援を通じて優秀な学生を全国から集めることが目的だ。それに合わせて、医学部の入試日程も変更されることが決まった。 (長屋文太)

入試日程の変更も行う
新たに始まる奨学金制度の正式名称は、「医学部人材育成特別事業奨学金」。家計支持者の年収制限はなく、一般入試の成績上位者10人が給付の対象となる。事前申請の必要はなく、合格発表時に対象者に個別に知らされる。

この奨学金を創設する理由について、医学部医学教育統轄センターの門川俊明教授は「国立大学と慶應義塾の両方に合格した際に、学費の点では不利な慶應義塾に、優秀な学生に入学してもらうため」だと話す。入学後に審査が行われる通常の奨学金とは違い、入学前に奨学金の給付が保証されるため、入学時の判断材料となることが期待される。また、基本的に入学から4年間継続して給付を受けられる点もこの制度の特徴である。

現在、医学部の初年度の学費は約379万円だ。学費に加えて下宿代がかかることが敬遠され、地方出身の学生が減っていることも理由として挙げられる。門川教授は「医者になると、多様な背景を持つ患者への接し方を考える必要がある。そのためにも多様な価値観を持つ優秀な学生を集めたい」と述べる。これまで地方学生を対象にした奨学金として、「学問のすゝめ奨学金」(医学部の場合年間90万円を給付)があったが、今回の奨学金はそれより給付額が大きい制度となる。

国立大と併願受験する学生の負担を減らすことを目的に、来年度から入試日を2日早めることも決まった。特に地方出身学生に配慮し
た措置だ。毎年2月25日に行われる国立大の2次試験の直前を避け、1次試験日を21日から19日に変更する。

現在、慶大医学部は研究医の養成にも力を入れている。医学部卒業生の中で基礎医学に進むものが少なくなっていく中、一定数の基礎医学研究者を育成する方針だ。そのために、研究医養成プログラム(MD―PhDコース)に進む学生には5・6年生への進級時に100万円の奨学金を支給する制度を採用しており、前述の奨学金と合わせると6年間で1000万円が給付されることになる。

門川教授は「特に、研究面でのリーダーシップを取れる学生を求めている。慶應の良さを知ってもらい、優秀な人材を育成したい」と語った。