塾生新聞は創立時から45年に渡って、新聞を発行し続けてきた。45年もの月日の間に、新聞以外のメディアが台頭し、新聞を取り巻く状況は刻々と変化してきたといえる。また、近年では若者の活字離れやインターネットの発達によって、新聞というメディアそのものが転換期を迎えている。 創刊500号というこの機会に、さまざまな立場から新聞の特徴や今後進むべき道を見つめてみたい。
(寺内壮・長屋文太・藤浦理緒・榊原里帆・成田沙季)


◆株式会社クリエイティブ・リンク 代表取締役社長
AFP通信 Vice President 實方克幸氏

新しいビジネスモデル必要

マスメディアを取り囲む状況は世界でも日本と同じだ。ニューヨークタイムズから「イノベーションリポート」という記事が出た。その記事に対してトーマス・バクダル氏が「一つ一つの記事に価値はないが全部集まると価値がある」、「ニュースペーパーはジャーナリズムのスーパーマーケット」という興味深い考察をしている。彼の言葉を借りると、通信社は事実をメディアに売る漁師や魚市場のようなものだ。

確かに新聞にはスーパーマーケットのように1か所で情報をそろえられるという利点がある。ニュースの選別者として新聞という形は残るだろう。ただ、それが今のように紙媒体とは限らない。特にニッチな情報を扱うような新聞はディープでリアルタイムな情報が欲しいので、検索性などを考えるとデジタルになっていくと思う。

紙からデジタルへの移行が簡単に進まないのは紙の新聞を読む人が多いからだ。日本の新聞は家に配達する点で世界でも珍しい。読売新聞や朝日新聞ではものすごい数の新聞が毎日配達される。このリーチ数をネットで達成するのは大変だ。

インターネットの登場でメディアはまた新しいステージに入った。多くの人が情報を発信できるので、すべてのことが可視化される時代になった。しかし、ジャーナリストが書いたものを扱う全体的なルールがわからなくなっている。我々の書いた記事を誰かが書き直し、インターネットで流すという事態が起きており、信頼できる情報が求められている。クレジットがはっきりしたもの、ブランドが大切になってくる。

世界中のジャーナリストがこれからどうするかを考えているが、マスメディアがビジネスを続けられるかが問題だと考えている。放っておけば世帯数が減るので新聞の発行部数は減っていく。マスメディアがビジネスとして成り立ち、ジャーナリストが給料をもらえて幸せになれる。そういうビジネスモデルを今後作れるかが重要だ。

新聞社の中には、本社ビルの賃貸で収入を得ているところもある。しかし、通信社は不動産業をするわけにはいかない。世界で起きていることをしっかり伝えていくという社会的使命がある。「何が起こっているか」ということだけを伝えることは大切だ。しかしメディアが減ると、ニュースを売って収入を得ている通信社にとっては厳しい。ウェブコンテンツの拡充など、自分たちでさまざまなことをしていかなければならない。大きな通信社はAP、AFP、ロイターと世界に3社しかない。昔は一つの国に一つ通信社があるのが当たり前だったがその時代はいま崩れてきている。