02年12月に安西塾長の発案から開発がスタートしたkeio.jp。これは1つの共通認識システムを使うことで、慶應義塾が提供する多くの情報を活用できるようにすることを目的としたサービスである。最近では学生が自分の成績を閲覧したり、求人ナビのアプリケーションが登場するなど、便利な機能が加わり発展している。今回はサービス提供が拡がりつつあるkeio.jpが作られた経緯やその特徴、現在抱えている問題を紹介しよう。

(香取了)

 以前から慶應義塾には多くの提供システムがあり、それぞれのシステムへログインするためにはいくつものIDやパスワードを使いこなす必要があった。その問題を解決すべく、1つのIDとパスワードで多くのサービスを提供することを目的として、keio.jpが作られた。教員と職員合わせて13名の参加の下、環境情報学部の徳田英幸教授をリーダーとするプロジェクトが発足し、04年5月まで、keio.jpを実用化するために基本的なシステム作りを主な方針として検討・開発を行った。その後はインフォメーションテクノジーセンターがシステムの運用を行うこととなり、ルール作りや、様々なシステムの整理を行い、去年4月から塾生にIDを配り始めたのである。

 現在提供されているサービスとしてはまず、メールサービス(慶應メール)が挙げられる。これにより、慶應の中でもキャンパスごとに分かれているメール機能を1つにまとめることを可能にした。また、06年3月からは成績閲覧機能が追加された。現在、塾生の成績は保証人宛に郵送されている。このため、、旅行や1人暮らしをしているなどの事情によって自分の成績をすぐに見ることができない塾生がいるという理由から、塾生がパソコンを使えば keio.jpを通して閲覧できるようになった。教育支援システムという機能も提供しており、一部授業のレジュメや資料をここでダウンロードできる。また、人気の高いサービスとしては、自宅から電子ジャーナルやデータベースが利用できるリモートアクセスサービスや、コンピュータの自習ソフトのストリーミング配信サービスなどは、塾生・教員問わず、非常によく利用されている。他にも企業からの求人情報を検索するための求人ナビなどを提供している。現在塾生のkeio.jpのID所得率は約75%で、教育支援システムなどの更なる動き出しでID所得率100%を目指している。

 今後追加が検討されている機能はいくつかあるが、ひとつの具体例としては、就職活動支援サービスである。慶應から企業に就職したOBたちの承諾を得て、連絡先を載せてコンタクトをとることができる、というものだ。このサービスについては、秋学期中には完成予定だという。

 しかし、サービス開始後まだ1年半という新しいkeio.jpは、いくつかの問題を抱えている。keio.jpで利用できるアプリケーションは、システムの管理を担当するインフォメーションテクノロジーセンターに限らず、大学内の様々な機関から提供されている。こうした各種のアプリケーションについて、利用者からの意見を体系的に集めるための機能を十分に活かしきれていないのが現状で、keio.jpを利用する塾生や教職員達の意見をいかに取り寄せることが今後の課題だという。さらに、現段階では職員・教授・塾生という多数のユーザーにサービスを提供しており、個人によっては利用できないサービスもメニューには現れてしまっている状態である。そこで、最終的に欧米でも実行されている個人ポータルの仕組みのような、個人に特化したメニューを作り上げることを目標としている。

 keio.jpについて、インフォメーションテクノロジーセンター本部課長の金子康樹さんは「keo.jpは駆け出しのシステムで、まだまだ不自由なところが多いが、もし意見があれば、ヘルプなどからたくさん言ってほしい。その意見をもとに、keio.jpを『便利に安全に』を果たすことのできる、より良いものにしていきたい」と話している。