小田教授 アフリカ的社会主義を再考

慶大東アジア研究所による講演会「アジア・アフリカ研究―現在と過去の対話」が先月17日から、三田キャンパス北館ホールで始まった。東アジア研究所の創立10周年を記念し、歴代所長・副所長による全8回にわたる講演が予定されている。初回には、初代所長である小田英郎慶大名誉教授が登壇した。

小田教授はアフリカ政治の研究を専門にしている。「アフリカ現代史における現在と過去の対話―独立期アフリカ指導者たちの思想と行動」をテーマに、アフリカ的社会主義とアフリカのルネサンスが再考された。

アフリカ独立期に、アフリカ性と社会主義の結合を目指して指導者が掲げたのがアフリカ的社会主義である。同時にそれは、ヨーロッパ人によって歪められたアフリカ像に異を唱え、アフリカの伝統的価値を再評価し復元する試みでもあった。このアフリカ性の主張はポスト冷戦期の社会主義の世界的な退潮とともにトーンが低下したが、人種解放後の南アフリカを中心に今なおアフリカルネサンスの叫びとして受け継がれていることが説明された。

講演の最後には、質疑応答が行われ、近年のアフリカ大陸のイメージに触れた。「飢餓、貧困、紛争などの問題を抱えた大陸というネガティブなイメージから、10億人の巨大市場というプラスイメージとなった。しかし楽観的に捉えすぎてはならず、まだ何とも言えない状況である」と小田教授は述べた。

同研究所は2003年に地域研究センターが前身となって設立された。このセンターで行われてきた世界の各地域・国家についての研究や国内外の地域研究施設等との交流を受け継ぐ一方で、研究対象と活動の重点を明確化させるため同研究所が発足した。なお、同講演会は3月中旬まで予定されている。