【矢上が創る未来】電子工学科 黒田忠広教授


世界を大きく変える集積回路の技術

「LSI(大規模集積回路)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。いわゆるICチップのことであり、私たちの身の回りの電化製品のほとんどに組み込まれ、その制御を行う重要なものである。「今この集積回路が大きく世界を変えるインパクトを与えている」と話すのはLSI研究の第一人者である黒田忠広教授だ。

ICチップの中には、信号の増幅作用やスイッチとしての役割をするトランジスタという素子が組み込まれている。現在、1つの小さなICチップの中には数百億個ものトランジスタが集積されていて、これは人間の脳の神経細胞を超える数だ。この数が11年後の2025年には30兆個に達すると予測されており、いずれ人体を構成する細胞の数すらも超えると予測されている。具体的な数値を見てもわかるように、集積回路の研究は急成長を遂げている。

集積回路の成長を「液体が沸点に達し、気体となって大きく広がっていくような状態」と話す黒田教授。その止まらない成長は、折り畳み式が主流であった携帯電話を数年間だけでスマートフォンに変遷させた。それに留まらず、時計型、眼鏡型と新たな情報端末が開発もされている。

黒田教授は現在、省スペース、省エネルギー化を目指し、平面状に広がる集積回路を積み重ね状にする「チップの3次元化」の研究に取り組んでいる。この研究は集積回路分野のさらなる成長を促す起爆剤になると期待されている。

自動車の自動運転技術なども技術的には完成されている。しかし、事故が発生した際の責任の所在が明確にされていないため、実用化には至っていない。集積回路の向上で人工知能が発達したことにより新技術が生まれるスピードに、社会体制の受け入れが追いつけないのが現状だ。

社会に受け入れられてこそ技術を開発する意義があり、「自分は社会にどのような未来を作りたいかを、開発した技術で提案できるような研究者でありたい」と語る黒田教授。利用する方向性が見当たらない技術を作るのでは意味がない。自分の開発した技術では「こういったことができる」という利用価値があってこそ研究が人々の幸せを生み出すのである。

急速に成長を続ける集積回路研究の最前線で活躍する黒田教授。これからもさまざまな新しい未来の形を私たちに提案して続けてくれるだろう。(小林知弘)