ぶらり男二人旅~横浜編

 言わずと知れた観光地横浜。日吉キャンパスも横浜市にあるということで、なかなか馴染み深い塾生も多いだろう。

 「みなとみらい」や「中華街」は横浜を代表する観光スポットであるが、それだけではない。今回は、横浜の「名前は聞いたことあるかもしれないけど、実際に行ったことはないわよねぇ」的な穴場を男二人で歩きながら、紹介していく。素敵な新しい発見があるのではないだろうか。
 出発地はJR京浜東北線「石川町」駅。みなとみらい線「元町・中華街」駅の登場でめっきり陰が薄くなってしまったが、元町と中華街へのアクセスはばっちり。

 そこから「元町」方面へ。「元町通り」と呼ばれるこの広い通りには、小奇麗でお洒落なお店が並ぶ。当日はあいにくの雨で、人通りはまばらだったが、晴れていればカップルや家族連れで賑わう。男二人で歩いた私たちには縁がなさそうなお店が多かったが。

 しばらく歩き、通りを抜けたところで右側に続く横道に入る。右手に「外人墓地」を眺めながら、急勾配の坂を登ると、そこは外国人が多く住む、高級住宅街山手地区である。坂の途中で早速、豪勢なお宅を発見。表札には外国人のお名前が。

 坂を上りきり、「外人墓地」の中に入る。入り口すぐの資料館の中では、開国当時の様子が書かれたパネルが置かれている。「外人墓地」は黒船ペリー一団の部下の埋葬のため、日本から譲渡された土地で、その後のロシア人追葬を期に、「外人墓地」としての土地利用が正式に決まったそうだ。

 資料館を出て、早速中に入ろうとしたが、今日は中に入れないらしい。普段の休日は一般開放されていて、自由に中を見て回ることが出来るので、楽しみにしていた私としては非常に残念だった。仕方がないので柵の傍から中を見回す。雨ということもあって、雰囲気は抜群によかった。静寂で神聖な空気に包まれた空間。映画で見たことのある、外国の墓石がいくつも並ぶ。それぞれが独特の形を取りながらも、非常に調和の取れた墓地。そこは完全なる時の終着点。それゆえの永遠なる死者の空間。全く知らない人達が眠る場所だからこそ感じる不思議な感覚。我々はしばらくその静かに時が眠る空間の中、存在を越えた魂の流れに身をゆだねていた。

 「外人墓地」を後にして、すぐ傍の「港の見える丘公園」に向かった。まずは公園正面の展望台へ。ここから「ベイブリッジ」や「みなとみらい」を眺めることが出来る。今日は霧が濃かったが、普段はかなり遠くまで見ることが出来る。公園右側には庭園が広がり、中央の噴水が良い雰囲気。綺麗に整えられた木々を抜けると、そこには「大佛次郎記念館」がある。そこの左にある道を通り、短い橋を渡ると、今度は「近代文学館」がある。どうやらここは文学にちなんだ場所であるようだ。ちょうど「まど・みちお」や「金子みすゞ」などの詩人の企画をやっていた。建物を迂回し、さらに奥へ進んで裏道を抜けると、左側には「韓国総領事館」がある。この地区はとことん、国際色豊かだ。「韓国総領事館」の正面にある教会ではちょうど結婚式が行われていたらしく、新郎と新婦が歩いているのを見かけた。幸せを分けてもらったような気がして非常に気分が良くなった。

 それにしてもこのへんは豪華な家が多い。バウハウス風の高級住宅がどこまでも続く。教会を右に進むと、洋風の可愛らしい家が目に入る。家の前の看板には「山手一一一番地」と書かれている。近くを通り過ぎた女性二人が「ケーキ、ケーキ♪」と言っていたが、喫茶店なのだろうか?その家の隣は「港の見える丘公園」の敷地内で、別の噴水がある広場である。こちらの噴水の方が豪華で、深緑の大きな像から水が溢れ出ている。この広場ではたまに絵描きが来ている。キャンバスに納めたくなる程、素敵な雰囲気なのだ。

 再び、公園内を通って、正面の広場に戻る。いろとりどりの季節の花がなんともきれいだ。次は左側の林のほうに入っていき、「フランス山」へ向かう。そこには「フランス総領事館跡地」と、トリコロールに配色された大きな風車がある。この領事館は関東大震災で一度倒壊し、立て直された後も火災で焼失している。二階部分が失われている階段などが崩壊の切なさを物語る。

 「フランス山」を後にして、林の奥に続く階段を降りると、関内方面へと続く歩道橋がある。ここからは中華街も近いので、小腹の空いた我々は、中華街で安い店を見つけしばし休憩。

 再び出発した頃には雨も上がりっていた。次に向かったのは「山下公園」である。入り口付近でパレードに遭遇。いったい何のパレードだったのだろうか。山下公園の右側には「横浜トリエンナーレ」の看板とオブジェが見えた。今回は立ち寄らなかったが、今度ぜひ一度観てみたいものだ。

 「山下公園」を海沿いに歩いていく。「氷川丸」は今日も海に浮かんでいる。「氷川丸」横に設置されていたステージでは、どこかのバンドの女性ボーカリストがそのハスキーな歌声を披露している。「山下公園」の海沿いの道では、こんな風によくイベントが行われている。大道芸も多い。いつだったかは、チェーンソーのジャグリングを披露している人もいた。

 「山下公園」を端まで歩き、橋を渡って港沿いを歩く。左手には「横浜市税関事務所」や「神奈川県庁」が見える。橋を途中で降りて、県庁の方へ歩いた。明治時代に建設されたと思われる外観をもつ県庁は堅苦しい雰囲気だ。ちなみに、税関前の広場は夏の花火大会時には、壮絶な場所取りが行われる。

 橋の方に戻り、再び歩き出す。はるか前方には「ランドマークタワー」と観覧車が見える。薄い霧に包まれている「みなとみらい」。最先端の都市開発地域でありながら、新宿や秋葉原とは違った、静かで、巨大な一つのモニュメントの様に見える。

 橋を渡りきった先は「赤レンガ倉庫」である。お洒落なお店や、カフェが倉庫の中で並ぶ。正面の広場ではフリーマーケットが開催されていた。どうやら対象は若者向けではないらしく、骨董品や、老婦人が着そうな洋服、昔の人形などが売られていた。

 フリーマーケットの中を通り抜け、正面に広がる海のほうへ向かい、遠くを眺める。向こう岸に「マリンタワー」と「ベイブリッジ」が見えた。先ほど中華を食べたのは、「マリンタワー」の近くだ。随分歩いたものだ。ふと、海を見ると、強風のせいか、大荒れだった。停まっている船が大きく上下に揺れる。海に浮く形になっている船着場自体も激しく揺れていた。波が大きく降りかかる。船着場の上にいる人たちは必死で手すりにつかまり、濡れながらたった今出航した船に手を振っていた。いささか滑稽な情景であった。

 手すり沿いに歩きながら、「赤レンガ倉庫」の裏に広がる広場に入る。綺麗に整えられた芝生とたくさんのベンチが並ぶ場所だ。ここから「みなとみらい」の夜景を見ることだってできる。さて、ここにはあまり知られていないが「横浜市旧税関事務所跡地」がある。建造物の隙間には草が生い茂っているが、その骨組みはしっかり確認できる。こんなところに一昔前の建物を発見したりすると少し嬉しくなってしまうのは多分私だけだろう。そんなことを思いながら、気付けばそこは「ワールド・ポーターズ」へと続く歩道橋である。ショッピングや映画も楽しめる「ワールド・ポーターズ」を抜ければ「クイーンズモール」や「ランドマークタワー」に行くことが出来る。

 さて、かなりの距離を歩いた今日のコースもここで終わり。今回、紹介した場所は一応観光地として知られているが、前述したように実際に歩いたことのある人はあまりいないのではないだろうか。めざましく進歩・発展を続ける横浜。その中で、開国の町横浜としての国際色豊かな、そして開国当時の雰囲気をどことなく醸し出す横浜を知って欲しい。横浜育ちの私としては、塾生に横浜がもっと身近な街になることを願ってやまない。

 それにしても、今日のようなコースを男二人で歩いたのは結構切ない。

 (古谷孝徳)