慶大グローバルCOEプログラム(GCOE)主催の第5回環境共生・安全システムデザインシンポジウムが先月4日、日吉キャンパスの藤原洋記念ホールで開催された。最終回となる今回のテーマは「脳と心と幸福を考える」。脳科学者の茂木健一郎氏、東京大学大学院教授の池上高志氏、慶應義塾大学大学院教授の前野隆司氏がそれぞれ講演し、その後3人はパネルディスカッションを行った。
まず茂木氏は、経済成長と幸福を感じる人の割合に関連性はなく経済発展では幸福は得られないと述べた。また、幸福は単一の要素によって決まるとするのは幻想であり、複数の要素を考えなければならないと論じた。さらに、社会的幸福を得るには他者と積極的に共有をしていくことが重要であると説いた。
池上氏は一般に考えられる幸福論とは違った論を展開した。日常の中で行われる周期的な行為の繰り返しを壊す「カタルシス」を自発的に起こすことや、単純なことを繰り返すことで人は幸福感を得られるという。
前野氏は過去に客観的な幸福を研究すべく幸福に関するアンケートを1500人に実施している。その際洗い出した幸福を感じる因子分析を紹介して論じた。因子は4種類挙げられる。一、自己実現と成長。二、つながりと感謝。三、楽観性。四、人の目を気にしない傾向である。特に三と四の要素を感じづらい日本人は、これらの要素を感じられるようになることで幸福感を得られるようになるはずだ、と講演を締めくくった。
パネルディスカッションでは創造性やポジティブ思考と幸福との関連、統計的な幸福の捉え方の是非などについて意見交換を行った。