第694回三田演説会が7月6日行われた。今回は、建築家槇文彦氏が「言語、風景、集い。日本の近代化の中で現れた特性」と題して講演した。幼稚舎から高校まで慶應義塾に通い、1977年に特選塾員となった槇氏は、株式会社槇総合計画事務所代表取締役であり、三田キャンパスの図書館新館を建設した。
本講演は、昨年行われた国際建築の大会での基調講演の内容をもとにしている。槇氏は日本の近代建築の特徴に触れ、言葉と建築の不思議なつながりについて語った。
地域建築はその住民や自然に合うように造られていたが、モダニズムによって国々が国語に普遍語を取り入れた時、建築も同じく古い形を取り去り、進化の方向性を失うこととなった。日本は諸国の文化の良い部分を選び取ったり、漢字と仮名を併用したりするなど、独特の文化を作ってきた。それが建築面でも反映されていると話した。
さらに槇氏は、日本文化と建築の特徴が重なる点として、細かいところに気配りができる優しさを、その自然や言葉の中に持っていることを指摘した。日本文化が持つ優しさは、日本独特の自然との関係の中で培った感性であり、様々な日本の建築に見られる。明確な中心がなく目的が多様な個の空間が、中心を包み込むように連なる都市構造、角が丸い駅舎など、日本の社会全体に現れていると語った。