腰塚さん、お気に入りのオーガニック・コットンエコバッグと
腰塚さん、お気に入りのオーガニック・コットンエコバックと

彼女にとって、beautifulのスペルは「bio」tiful。自身の生活に「オーガニック」を散りばめることで幸せになると話す、法学部政治学科2年の腰塚安菜さん。史上最年少でオーガニックコンシェルジュ・ライフスタイリストの資格を持つ彼女。もの・ひとへの「やさしさ」にこだわる腰塚さんを追った。

もともと環境問題や途上国問題に興味があった腰塚さん。「悲惨な現状を深刻そうに伝える人はたくさんいるけど、もっとポジティブに解決策を伝えられたら」と考えていた。

高校2年生で、委員長として企画運営を全て任されたチャリティバザー運営で転機が訪れる。「お客さんに無印のバックをペイントしてもらってエコバックとして売ったり、手作り感のある雑貨を作ったり。身近なものを商品として売って、それが世界貢献に繋がるということに驚いた」と話す腰塚さん。手作り感の出る、温かみある素材を考えたと振り返る。その中で「素材を気にするようになると、本当の美とはすべてそぎ落とされた、シンプルでナチュラルなものなのではないか」と気付くようになった。「普段何気なく自分の身の回りにある衣服や口にする食品に『自然』が関わっていることを感じた。オーガニックコンシェルジュの資格を取ったことも、もっと自分に関わる自然を知りたかったから」。食の安全安心から自然環境との共生へとアンテナを広げる「案内人」であるオーガニックコンシェルジュ。普段から料理などの知識が豊富な主婦向けの資格だったが、最年少でその世界へ飛び込んだ。

しかし慶大入学後、すぐに体調が悪くなり、半年間の入院生活を余儀なくされた腰塚さん。「薬漬けの生活がとても辛かった」と振り返る。「健康であることは体にももちろん、心にも良いことだなと実感した。それだけでHAPPYな自分でいられるんです。オーガニックにもっと魅力を感じるようになった」と目を輝かせる。

1年後、食だけでなくオーガニックの活動を「衣」へ広げた。環境に優しいオーガニックな衣服、それを作る途上国の人々から、公正な値段で商品を買い取る「フェアトレード」。「つくる人にも環境にも優しい商品」を販売するブランド「people Tree」を学生PRとして広める活動を始める。「キラキラなファストファッションの裏には、大量生産ゆえに低賃金で働く人々が何人もいる」。ファストファッションを買わない、という呼びかけではなく「フェアトレード」の衣服も選択肢に入れよう、というポジティブな呼びかけを目指す。

「広げるにはエンターテインメントが不可欠」。そう断言する彼女に貴重な経験をもたらした慶大の授業がある。「人文科学特論」の授業を受け持っていた横山千晶教授に、夏休みに声をかけられた。横山教授は、日雇労働者が宿泊する簡易宿泊所が100軒以上立ち並ぶ「ドヤ街」、横浜市寿地区で独居老人・日雇労働者の方と交流を図るプロジェクトを進行中だった。「教授が私の活動していたフェアトレードに興味を持って、全ての企画を任せてくれたんです」。特別にプロジェクトへ参加することになった彼女がひらめいたことは、寿地区の日雇労働者の方たちとフェアトレードのファッションショーを行うというものだった。

「フェアトレードブランドの服に身を包んで、学生メンバーと寿地区の方々が腕を組んでショーをする。みんなが主役となってフェアトレードを楽しんでもらいたかった」と話す。この取り組みは多くのメディアに取り上げられた。

「それまでフェアトレードとかそういう言葉は、遠い国の人々を救うものだと思っていた。でもこのショーを通して、もっと身近でローカルな問題も解決すべきではないかと感じました」と話す。

現在、さらにフェアトレードやオーガニックをたくさんの人々に広めたいと考える彼女。選んだ次なるエンターテインメントの舞台は慶大の新ミスコンテスト「Beauty&Earth 2011」だ。「さまざまな考えを持つ、幅広い層に訴えるには絶好の場所」。ミスコンという固定観念にとらわれず、自分の伝えたいフェアトレードの概念、エコの素晴らしさを広げたいと強く語る。

夏休みは元麻布農園に住み込み、2カ月の農業作業に勤しんだ。「オーガニック」が時代の流行になりつつある今、表参道や自由が丘などのお洒落な街で見かけるオーガニック製品も、その商品の裏には相当な人々の努力がある。「服も食品も『これはどこから来たのだろう』という問いかけが大事」と話す腰塚さん。「人にそう思わせられるのはやはり『商品』という形。わたしも将来それを提供する立場になれたら」と夢を語る。

人生の目標は「何かのプロフェッショナルとして、分野のキーパーソンとなること」と話す彼女。自身も生き方を手本にしているさまざまな「ロールモデル」に出会ってきた。「オーガニックの世界にも、エンターテインメントの世界にも、たくさんの素晴らしいロールモデルがいます。私はできるだけその方々と直接コンタクトをとって、良いところをエッセンスとして自分に吸収するようにしているかも」と微笑みながら語る。

彼女のテーマは「Ecology&Entertainment」。自分のぶれない軸をしっかり持つ腰塚さんのエンターテインメントショーは見飽きそうにない。

(西村綾華)