情報の教養学第3回講演会「フェイクニュースと民主主義―いま私たちが為すべきこと」(慶大教養研究センター主催)が先月21日、日吉キャンパス第4校舎で開催された。講師としてジャーナリスト、キャスターの堀潤氏が登壇した。

インターネットやSNSが発達し誰もが情報を発信できる時代になり、フェイクニュースと呼ばれる報道が現れた。そのような報道に対して、いま私たちが身につけるべき技術について、メディアの軌跡や自身の経歴を交えながら論じた。

フェイクニュースと民主主義について堀氏は、自分の意思の形成過程が分からない中で投票活動などを行うことの危険性を説明。民主主義の対義語を「沈黙」だとし、心を揺さぶる強い声が世の中の方向性を作る一方、反対の声を上げられないことの危うさを指摘。自分の意見を伝えることの意義を強調した。

また、フェイクニュースが生まれるのは誰かの強大な意思がそこに働いているからだとした。

堀氏は、報道が必ずしも正しいありようを示せていなかった例として、2‌0‌1‌6年秋の阿蘇山噴火後の報道が、被災地で実際に見聞きした状況と異なっていたというエピソードを挙げた。被災地の被害状況としてふさわしい報道を、情報の発信者と受信者の双方が期待していると論じた。

さらに、正確な情報の見極め方として「主語の大きさ」に注目するように参加者に促した。「被災地」という言葉にしても、思い浮かべる場所は人それぞれであるように、世の中には人によって意味が異なる「大きな主語」がはびこっており、小さな主語に目を向けることの重要性を喚起した。