広辞苑第七版発行 凝縮された言葉の箱

先月12日、10年ぶりに改訂された『広辞苑』の第七版が刊行された。今回、1万項目が新たに加わり、計25万項目というボリュームになっている。日々変化する「言葉」の運用について、『広辞苑』を通じて迫った。

「辞典は基本的に改訂を続けるもの」。岩波書店辞典編集部の平木靖成さんはこう語る。10年という改訂のタイミングについては「『広辞苑』は 日本語として『定着した語』、または『定着すると考えられる語』を厳選するのが編集の基本方針。定着度を見極めるには10年程度で見るのが言葉の変化を知る上ではちょうどよい」と言う。「定着」と言われても、その判断は簡単ではない。ある言葉を知っているのが「100人に1人」 であっても、その言葉は定着していると言えることがありうるという。

例えば、釣り用語を見てみよう。魚が尾も釣れないことを表す「ぼうず」や釣っている人どうしの釣糸がからみ合うことを指す「おまつり」などは一般の人にとってはあまり馴染みがないかもしれない。しかし、釣りをしている人の多くがその意味を知っている。人数の多寡にかかわらず、特定の分野に関わる多くの人が知っていれば、その言葉は定着したとみなせるのだ。

インターネットの広まりは言葉の定着に影響を与えないのか。「言葉が生まれるスピード、廃れるスピード、定着する言葉の割合はそんなに変わっていないと思う」と平木さん。変わったのは、言葉が流通するスピードの速さだと語る。

インターネットの広まりが影響したのはむしろ辞典の役割だ。昔の辞典は、読者が知らない言葉の意味を引いて調べるための読み物としての役割が大きかった。現在では言葉を発信する機会が増え、それぞれの言葉の意味を的確に表現したいというニーズも増えている。発信者のための辞典、そのような編集方針に国語辞典全体が変わってきているという。もちろん『広辞苑』も例外ではない。

平木さんに「言葉」の意味について尋ねてみた。「言葉はコミュニケーションツールであり、思考を形作る道具」。その中での辞典の立ち位置については「ある言葉が使われている中心的意味を想像して、編集部内で深く議論して、凝縮して提示するのが国語辞典。正解がただひとつあるわけではない」と語った。私たちの周りにあふれている言葉。決して失うことのできない言葉。その意味について辞典を開いて深く考えてみるのも、言葉を上手く運用するための道しるべになるかもしれない。

(曽根智貴)


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