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【特集】塾生が、考える ー塾長選挙ー

今年5月、新塾長として長谷山彰氏が就任した。しかし塾長選出の手続きが定まって以降、前回までは教職員450名による投票で1位の得票数だった者が塾長に選出されてきたという歴史がある。しかし、今回は、教職員投票で過半数の選挙人から票を集め1位となった候補者ではなく、2位の長谷山氏が塾長に選出される結果となった。

今回の塾長選出は、手順を定めた諸規程に違反していない。しかし、1‌9‌6‌4年に現在の選出方法がほぼ完成して以来、教職員投票の結果はそのまま反映され続けていたために、今回の結果を不満に思う教職員は少なくない。教職員は大学側に説明を求めているが、どのような議論を経て長谷山氏が塾長に適任であると判断されたのかについては、未だ説明がなされていない。

今回の塾長選を受け、何が問題とされたのか。また、何がその混乱を引き起こしたのか。5カ月間の取材を通して、塾生新聞は再検討した。

この特集の記事
・「塾長選挙」を一からわかりやすく(当記事)
【塾生アンケート】今回の塾長選挙について
専門家の眼から見た「塾長選」
塾長選出過程の歴史的変遷
―坂西隆志氏の論文による考察

論説:「社中」の一員として説明を求める

 

塾長とは

塾長とは、慶大学長であるとともに、学校法人である慶應義塾の理事長も兼ねた役職のことを指す。つまり、大学のみならず、病院や一貫教育校のトップでもある。

塾長は、「一切の塾務を総理し、且つ塾務全般につき慶應義塾を代表する」職務を担っている。個々の案件の決定権限を持つ理事会の構成員でもある塾長は、重要な役職である。ただし塾長は、評議員会や理事会の決議に基づき業務を行うため、塾長一人の意思だけで慶應義塾の運営が進むことはない。

しかしながら、大学や福澤諭吉に関する記念事業において、どのように舵取りをするかは塾長の手腕にかかっている。例えばSFCは、石川忠雄元塾長が中心となって作られた。どの塾長が就くかによって、予算の使い道は大きく変わる。学生も、何らかの形でその変化を実感として感じるはずだ。

塾長はどのようにして選ばれるのか

候補者の選定を行う委員会は、「慶應義塾長候補者銓衡委員会規則」及び「塾長候補者推薦委員会規程・同細則」に基づき定められている。

まず、大学各学部、一貫教育校、職員の計12部門から2名ずつ、延べ24名の第1次塾長候補者が選出される。なお、各部門の選出方法はそれぞれで定められている。

塾長の選出過程
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次に、第1次塾長候補者を、塾長候補者推薦委員会で3名に絞る。塾長候補者推薦委員会とは、大学各学部や一貫教育校の専任教員、専任の職員など、計450人から成り、塾長候補者は2回の投票によって選出される。第1回投票は、3名の完全連記(必ず3名を書く)により上位5名を選出、第2回投票では、3名以内の連記又は単記(3名まで書くことができる)により上位3名の第2次塾長候補者を選出する。

そして、3名の第2次塾長候補者を塾長候補者銓衡(せんこう)委員会で1名に絞る。塾長候補者銓衡委員会は、評議員会議長、教職員を除く評議員14名、かつて塾長であった者2名、各学部長、一貫教育校長のうち1名、部長以上の職員のうち1名の計29名から成る。塾長候補者銓衡委員会では、候補者による所信表明や質疑応答、銓衡委員による議論が行われる。

最後に、銓衡委員会によって選定された候補者を評議員会で承認することによって、正式に選任される。

なお、塾長候補者銓衡委員会の議事録は無く、評議員会も含めて、具体的にどのように選任されたかは公表されていない。

 

紛糾する評議員会

今年6月号で、塾生新聞は非公式の評議員会の議事録を入手し、評議員にも事実の確認を行った。今回改めて取材を行ったところ、正式な議事録を入手することができた。

議事録によると、詮衡委員会が教職員投票2位の候補者を塾長候補として指名したことに関して、複数の評議員から説明を求める声が上がっている。

これに対し、評議員会議長であり銓衡委員会委員長を兼任する岩沙弘道氏は、「銓衡委員会の審議過程は軽々には公開し」ないとし、長谷山氏を塾長候補として選出するまでにどのような議論がなされたのかを具体的に明かすことはなかった。

岩沙氏は、「社中一致」という言葉を用いて、銓衡委員会として、塾内の意思を汲み取った決定を行った旨を強調している。義塾の建学の理念にも関わるこの「社中」の理念は、慶大の学校法人としての性質を見極める上で重要なキーワードとなる。「専門家の眼から見た「塾長選」」では、専門家の眼から今回の塾長選挙について、もう一度見つめ直す。

塾内の動き

今回の塾長選挙の結果を受けて、学内で動きがあった。4月20日の評議員会での塾長選任を受けて、5月から塾長、塾長銓衡委員会委員長、評議員会議長宛の「質問書」への賛同を求める署名運動が、慶應義塾構成員向けに行われた。

質問書では、塾長候補者銓衡委員会の審議内容、塾長候補者銓衡委員会で教職員投票の得票数が2位だった候補者が推薦された理由と根拠、評議員会における銓衡委員会の審議結果についての報告内容や、その承認に至るまでの審議内容を求めた。

9月1日、『塾内ニュース』にて、慶應義塾常任理事会が、塾内外の質問や意見に応えるため、「慶應義塾長の選出制度について」と題した文書を出した。

文書では、近年行われた、塾長選出に関わる諸規程の内容のほか、それに至る背景についても述べられた。結びとして、今回の塾長選出が、規程に則って実施された旨が明記された。

>>次記事:【塾生アンケート】今回の塾長選挙について

この特集の記事:
・「塾長選挙」を一からわかりやすく(当記事)
【塾生アンケート】今回の塾長選挙について
専門家の眼から見た「塾長選」
塾長選出過程の歴史的変遷 ―坂西隆志氏の論文による考察
論説:「社中」の一員として説明を求める