学生の「うつ」な気持ちとは

 テストが迫っている時、つらい失恋を引きずっている時、思わず「うつ~」とつぶやいてしまうことはないだろうか。友達との会話の中で、落ち込んだ気持ちを「うつ」と表現する学生も少なくない。
 塾生114人を対象に「学生の『うつ』っぽい心理に関するアンケート」を行った。
「自分が医学的なうつ病だと思う」と答えた人は全体の8%、「自分が医学的なうつ病だという認識はないが、日常生活で『うつ』っぽさを感じたり、口にしたことがある」と答えた人は68%、「うつを感じたことは全くない」と答えた人は24%だった。
 「どんな時に、『うつ』っぽさを感じるか」という問いについては、「嫌なことがあったとき」(文1)など、日常生活の嫌な出来事を挙げる声が多数みられた。また「なにもやる気が起きない時。そのせいで自己嫌悪に陥るとき」(法1)「面倒なことがあったとき」(総4)など、物事に対してやる気が起きないことから、自分が嫌になってしまうという意見も多かった。「すべてのことに対して、マイナスの反応しかできなくなる状態。悪い考えしか浮かばない」(文1)「将来が不安。上手くいく気がしない時」(経3)「なんとなく死にたくなる」(理4)などの同意見が複数あった。

「うつ~」と口に出すのもあり
 このような学生の「うつな気持ち」について、慶應義塾大学保健管理センター教授の大野裕教授にお話を伺った。
そもそも、気持ちが沈んだ状態を「うつ」と認識してしまうのは、大袈裟なのだろうか。「落ち込んだ気持ちをうつと言うのは、間違った表現ではない。感情を白から黒に変化するものと例えれば、うつが指しているのはグレーゾーン」と大野教授は言う。心の落ち込みも体の痛みと同じで、自分自身が感じるもの。うつが続くことで、日常生活に問題が生じたとき、治療が必要となるのだ。
 友人に対して、愚痴のように「うつ~」ともらすことにも意味がある。自分が感じた些細な感情を、無言のうちにためこんでいくと、閉鎖的な考えにとらわれてしまうことも多い。「偏見を持ったトーンで使われる点は心配だが、『うつ』という言葉を用いることで、自分を表現し、人と気持ちを共有することは必要だ。つらかったり不安だったりしたことを、内にしまい込む方が問題といえる」
 アンケートには、うつな気持ちになったとき、マイナス思考になり、負のループに陥るという声があった。そんなときは、バランスのいい考え方をしていくことが大切なのだと大野教授は提言する。
 「うつの時はプラス思考になれと言われがちですが、本人はそれができなくてつらい。そうではなくて、まず現実に戻り、何がプラスかマイナスかをみること。その上で、どんな対策をしていくか考えて欲しい」。例えば、恋人とうまくいかないとき、プラスだけで「気にすることはない」と思い込もうとせず、「だめな可能性もある。だから何らか起こせるアクションがあるか」と、プラス・マイナスを取り入れ、できる限りで改善策を出してみる。事実に対して、極端なマイナス方向に突っ走っている自分を自覚できれば、大きな進歩である。
 うつを心がグレーゾーンに入ったシグナルととらえてみよう。そして誰にでも起こるシグナルだからこそ、うつが続いた場合は、医療機関の専門医に相談してほしい。うつシグナルが出たら、誰かに気持ちを語るいい機会、考え方を変える転機なのである。
(佐々木真世)


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