今春、第77回選抜高校野球大会に45年ぶりに出場し、見事ベスト8に進出した慶應義塾高等学校野球部。今回、我々は『エンジョイ・ベースボール!』を掲げ、独自の手法で塾高野球部をまとめ上げた上田一誠監督にお話を伺った。

―甲子園での日々を振り返って
「高校野球は次から次に進んでいく。感慨に浸っている暇はない(笑)。ただ、もう一度あの場所に立ちたいと思う」

―45年振りのセンバツ出場
「センバツ出場常連だった昭和二十年・三十年代のOBの方々から、もう一度慶應のユニフォームを(甲子園で)見たいと言われていて、おじいさんたちに孝行したいと思っていた。今回、孝行できて非常にうれしい」

―雨による開会式順延
「『開会式』というものを味わいたかったね。結局(初戦の関西戦が)開会式後の、それも三試合目に試合という最悪の形になってしまったから(笑)。でも、雨が降ったことで逆に気持ちが切り替えられたと思う」

―初戦の関西(岡山)戦
「ウチの部訓の中にもあるが、『雨・風のなかでも負けない』よう一年中言ってきた。最悪のコンディションの中で向こうのピッチャーも調子が悪かった。うちは大胆にのびのびと今まで通りの野球ができたと思う」

―劇的なサヨナラ勝ち
「感無量だった。球場中から塾歌が響いてきて。甲子園で塾歌を聴けて感動したね」

―ベスト8進出
「甲子園に行くからには、ただ出ただけでは面白くない。もちろん優勝を狙っていたし、自信もあった。チーム全体で一戦一戦勝利を狙っていった結果だね」

―塾高の監督としてのプレッシャー
「正直、重圧はあった。一回くらいは甲子園で塾歌を聴きたいというOBの期待もあったし。学校の盛り上がりも大変なものだったから。でも逆に、開き直って『楽しく』やろうと。そして、それが結果的にできた」

―観客のバックアップ
「試合中は本当に後押しになった。あれだけ応援していただいたら、元気を出すしかないでしょう(笑)。初戦は応援の方々もびしょ濡れになって応援してくれましたし。塾の一体感を感じた。本当素晴らしい学校にいてよかった」

―ご自身が米国留学で学んだこと・感じたこと
「野球は『楽しんでやるもの』だということを米国で確認してきた。慶應の野球も、『精神野球』とは一線を画したいと思っている。お互いを尊重しあい、自分達で計画して『楽しく』練習をする。
これこそが、本来スポーツの持っている素晴らしさだと思う」

―監督から見た、今年のチーム
「粘り強いチーム。勝負にこだわってネチネチやっているよ(笑)。ただ、チームの完成度はまだ60%。ピッチャーを含めた守りの面、攻撃パターンの確立の面で、より精度をあげていかなくてはならない」

―夏に向けて
「センバツでの経験はいい財産・自信になった。この経験を糧にして、慢心せずに神奈川県大会に臨みたい。とにかく神奈川を勝ち抜く。そしてまた甲子園のグラウンドに立ちたいと思う」

(安藤貴文)