大学生の間でよく寝付けない、眠った気がしないという睡眠障害が昨今増えているというのをご存じだろうか。生活の中で取り立てて重い症状がないため、見過ごしている人も多いかもしれない。

しかし、「寝たのに疲れがとれない、眠いのに寝付けない、というのはうつ病の可能性もあります」と慶大保健管理センターの西村由貴准教授は言う。

うつ病などの思わぬ大きな病気とつながりがある睡眠障害の最大の原因は、睡眠リズムの崩れである。通常、人の身体では朝6時ごろからアドレナリンが分泌され、一日の活動に備える。夜になるにつれアドレナリンの濃度は低下し、副交感神経優位、すなわちリラックスモードになる。さらに、睡眠を促すメラトニンの濃度が上昇し始める。こうして体内で睡眠のリズムが作られているが、これは体内時計が正常に機能していることが前提である。大学生は他の年代の人に比べて体力があるため、休日まで耐えてまとめて寝るといういわゆる「寝だめ」で乗り切れる人が多い。しかし体力に限界が来てしまうと燃え尽き症候群や五月病のように、精神状態に支障をきたすことになってしまう。

疲れていても、頑張ろうという気持ちを維持できているときはよいものの、限界が来てしまった時にはなかなかあらがえない。西村准教授は、睡眠障害を治すためには規則正しく睡眠をとる習慣をつけるほかはないと話す。また、「今の生活が合っていないことで睡眠障害が起きているのだから、ストレスを感じさせているほかの原因も併せて見つけることが大切」という。

原因には栄養バランスも密接に絡んでいる。無理なダイエットや、単に野菜のみを食し栄養が偏ってしまうという間違った菜食主義などが大学生には多く、睡眠障害が学生の間で増える原因にもなっている。睡眠だけではなく生活全体を見直すことが必要であるという。

そして西村准教授は「眠れないときにアルコールを摂取する人がいますが、酒を飲まなければ眠れないなど習慣化したり、酒量増加につながります」と大学生によくある間違った睡眠方法を危惧した。また睡眠薬などについては「正しく使用する分には問題ないが、改善が見込めないならすぐに医者に掛かってほしい」とのこと。

そろそろ試験期間が迫ってくる。ついつい無理をしがちだが、燃え尽きて試験どころでなくなる前に睡眠を見直すことが大切なのではないだろうか。           (片岡航一)