「大学の心臓」義塾図書館の魅力

今年4月に開館100年を迎えた三田キャンパスの旧図書館。これにちなみ、慶應義塾図書館の建物・所蔵資料・運営などについて、メディアセンター所長の田村文学部教授にお話を伺った。

まずは旧図書館について。関東大震災や戦災を耐え抜いて開館100年を迎えられたのは、れんが造りの頑丈な建物のおかげだ。これは 初代館長、田中一貞の功績だが、長く使い続けるための工夫はもう一つあった。「本は増え続けいずれ所蔵する場所がなくなるので、あらかじめスペースをとっておく」との方針を立てたことだ。これによって、第二、第三の書庫増築ができた。旧図書館の書庫が迷路のようになっているのは、時代時代で増設を重ねてきたためだ。

所蔵資料に関しては、重要文化財をはじめとする、貴重な資料の宝庫である。例えばアジアで唯一のグーテンベルグ聖書。そして経済学部長や図書館長、さらには文部大臣を歴任した高橋誠一郎旧蔵の西洋経済学コレクションや浮世絵コレクション、泉鏡花の自筆原稿や遺品などである。

開館30年を迎えた三田新図書館は、建築家槙文彦氏が「都市」をコンセプトに設計したもので、館内には多くの美術作品が点在している。図書館の入口には巨大なステンレスのオブジェ「知識の花弁」があり、中に入ると右手に宇佐見圭司作の大きな壁画がある。2階のエレベーター周りの壁には、日本の海を題材としたバートレットの作品が飾られ、その前のベンチは海を泳ぐ「くじら」と呼ばれている。

「図書館は使いやすさが大切だが、コンセプトも自然と感じつつ利用してほしい」と田村教授は述べる。資料の利用面での特徴として、学部や研究室の図書が図書館の図書と同じ建物内に所蔵され、同一条件で利用できることがあげられよう。他の大規模大学では、学部の予算で購入した図書は学部の図書館に所蔵され、利用にも制約があるのが一般的である。三田キャンパスのほぼすべての図書が同一に管理され、利用できるようになっているのは、「利用者には大変便利ではないか」と田村教授は語る。慶大には、6つのキャンパスすべてに図書館がある。その全体をメディアセンターという組織が運営する一方で、各キャンパスの図書館はそれぞれの特性に配慮し、所属する学生や教員のニーズに合ったサービスを提供している点が、運営面の特色だろう。

インタビューの最後に田村教授は「図書館は大学の心臓」と語った。図書館には、大学のこれまでの研究による知識が集積されている。日々、研究、教育のために必要な学術書等を収集し、次の時代に引き継いでいく。「学生・教員にとっての知識のよりどころであり続けることが大切」と田村教授。

開館100年を迎えた図書館に改めて目を向け、われわれの勉学、研究にいっそう役立ててみてはいかがだろうか。そして図書館には、来る200年に向け新たに歴史を刻んでいってもらいたい。(下池莉絵)

グーテンベルク聖書