先月10日、慶大・食と医科学フォーラムとスローフードクラブ主催のイベント「食と農と健康in慶應」が日吉キャンパス来往舎で行われた。本イベントは、食のサイエンスを研究する教員グループと食のあり方を追求する学生グループとが共同して講演、展示、試食などを企画したもの。

講演では生命科学振興会理事長の渡邊昌氏(医学部卒)を招き、「今、食を医学から考える」をテーマに行われた。

渡邊氏は、日本は42・3兆円もの医療・介護費用がかかっていることを紹介。「少子高齢化社会である日本は、このままではやっていけない。国民に正しい食事と運動をさせることで健康を維持でき、10兆円は医療費を減らせる」と主張した。

次に日本の危機として、渡邊氏は肥満者や生活習慣病の増大を挙げ、肉や牛乳の増加といった食事の変化が原因だと指摘。その上で宮沢賢治の詩「雨ニモ負ケズ」内の食事を例に挙げ、質素だが十分な量の栄養が取れているとした。

渡邊氏は、西洋医学に食養や薬膳など東洋医学の要素を組み合わせた統合医療の重要性を語り、医・食・農連携で長寿社会を作りたいと話した。また、病気は食事で予防できると強調し、「食の楽しみを追求する余り、生きる楽しみをやめてはいないか」と述べて講演を締めくくった。

講演後には、渡邊氏とスローフードクラブの学生、農家の方をパネリストに迎え、大震災と農業をテーマにディスカッションが行われた。