作家 高嶋哲夫氏 震災後の今を語る

震災文学の役割について語る高嶋哲夫氏
震災文学の役割について語る高嶋哲夫氏

「M8」、「TSUNAMI」、「東京大洪水」。これらはすべて地震、津波、洪水などの自然災害に関する小説である。9月11日で東北地方太平洋沖地震から半年が経った。今なお震災の爪痕は深く、さまざまなメディアで取り上げられている。そのような中で、とりわけ「震災文学」が注目を受けている。

作家、高嶋哲夫氏。慶大大学院工学部を修了後、日本原子力研究所研究員を経てカリフォルニア大学に留学。帰国後に作家へ転身といった異色の経歴の持ち主だ。

地震に関する小説を多く執筆する高嶋氏。そのきっかけとなったのは自身も被災した阪神淡路大震災だった。当時神戸市で被災した高嶋氏は災害について書かねばという義務感に襲われた。「震災による惨状を目の当たりにして、今までのキャリアを生かした作品を書こうと思った」。その後地震に関する小説を執筆することとなる。

高嶋氏は今回の震災を受け、小説の果たすべき役割を考えたという。「小説には楽しみながら読める魅力がある。自分の本が地震に対する啓もう、警鐘になれば。これから必ず起こる地震に備えて知識を得ることは重要」

今や日々取り上げられる原発問題。福島第一原子力発電所の事故を受け、国民の関心も高い。しかし一方で多様な意見が存在する。高嶋氏はどう考えているのか。

「私自身、今回の震災による原発事故が起こるまで原発の安全性を信じていた。しかし事故は起きてしまった」とした上で福島第一原子力発電所は事故以前から問題が指摘されていたことを踏まえ「『天災』による事故なのか、『人災』による事故なのかを考えなくてはならない」と指摘。「日本国内だけではなく、世界に向けても今回の事故を検証し、知らせていくべき」と力を込める。

「小説の中でもさまざまな視点を持つ人を登場させて、読者に意見を委ねている」。震災問題にも中立的な立場の学者が必要不可欠とし、客観視の重要性を訴えた。

情報が溢れ、錯綜する中で私たちはどのように情報を取捨選択し、この問題に向き合えば良いのだろうか。「今の時代は一国からの視点だけでは駄目。考えるべきは日本の将来ではなく世界の将来だ。塾生にはグローバルな観点からこの問題を考えてほしい」

地震大国日本において震災による問題は無視できるものではない。秋の夜長に本を手に取り、再考してみてはどうだろうか。

(米田円)