スポーツビジネスの可能性 日本企業の現状と課題

 慶大経済学部卒業後、同年(株)電通に入社。スポーツマーケティング局企画業務推進部長、ISL事業部長などを務め、グローバルスポーツのマーケティングに携わる。1994年のワールドカップでは、外資と合弁で設立したアメリカのマーケティング・サービス会社(バージニア州)にVPとして赴任。著書に『スポーツマーケティングの世紀』(電通)などがある。
 慶大経済学部卒業後、同年(株)電通に入社。スポーツマーケティング局企画業務推進部長、ISL事業部長などを務め、グローバルスポーツのマーケティングに携わる。1994年のワールドカップでは、外資と合弁で設立したアメリカのマーケティング・サービス会社(バージニア州)にVPとして赴任。著書に『スポーツマーケティングの世紀』(電通)などがある。

学校の授業科目に「体育」が設置されているように、日本ではスポーツを教育の一貫として捉える傾向が強い。そのためスポーツがビジネス色に染まることへの懸念が未だに存在し、スポーツビジネスを「黒幕」と見なしがちだ。
 だが、スポーツマーケティングング専門で健康マネジメント研究科の海老塚修教授は「スポーツビジネスの発展は、競技振興のみならず、日本の経済成長の鍵を握る」と異議を唱える。
 欧米と比べて、まだまだ小粒な日本のスポーツ市場。海老塚教授にスポーツビジネスの現状や、今後注目されるスポーツ市場についてお話を伺った。



「岡田ジャパンの躍進が続く最中、日本企業の存在感は薄かった」
去年6月に開催されたFIFAワールドカップ南アフリカ大会を振り返り、海老塚教授はこう語る。
試合中、ピッチを囲むLED式広告看板には、中国やインドといった新興国の企業ブランドが目立つ一方、日本企業はソニーのみ。FIFAのスポンサー権を取得した日本企業が1社というのは、1986年のメキシコ大会以降で最低の数字だ。
スポンサーが減少した要因に関して、海老塚教授は「日本企業の多くは現在、グローバル市場で経営戦略の見直しを迫られている。ワールドカップなどに投資する余裕がないのではないか」と説明する。
国内のスポーツ産業も順調とはいえない状況だ。
バブル期は6兆円にも迫る勢いだった国内のスポーツ市場も、ここ数年は4兆前後で平行線を辿る。特に「みる」スポーツの低迷が顕著だ。  海老塚教授は「日本のスポーツ界を牽引してきたプロ野球でも、(渡米した)イチロー選手や松井秀喜選手に代わる国民的なスターを輩出できていない」と指摘する。
 一方で健康志向の高まりも相まって、「する」スポーツの市場が成長している。特に企業が注目しているのがロードランニング市場だ。全国各地で開催されているマラソン大会への参加者は近年急増しており、社会現象ともなっている。
 海老塚教授は「マラソンのようなイベントは個々の経済的規模が小さいので、市場としての価値を見出しにくい」と前置きしながらも、参加者には高所得者層が多いことに期待を寄せる。計画的に練習を積み重ねる必要があるマラソンは、人々に自己実現の手段として認識されているそうだ。
 今後、スポーツはビジネスの舞台でどう機能していくべきなのか。海老塚教授は「企業は社会的責任が求められ、人々はそれを見えるかたちで期待している。発信したいメッセージをいかにしてスポーツと同調させていくかが、これからの課題だ」と話している。
(横山太一)