今春、2018年の第90回大会以来、5年ぶり10回目となる第95回記念選抜高等学校野球大会(春の甲子園)への出場という悲願を果たした慶應義塾高等学校野球部。春季高校野球神奈川大会での優勝と春季高校野球関東大会への出場も経験し、ますます勢いづいている慶應義塾高等学校野球部に所属する大村昊澄選手、八木陽選手、渡邉千之亮選手に、夏の甲子園への想いなど、話を聞いた。

 

―今年の慶應義塾高等学校野球部は、選手の皆さんから見てどのような特色があるチームでしょうか。

渡邉 部員それぞれの個性がしっかりしていると思います。慶應義塾高等学校野球部では、強制的に課題を与えられてこなすのではなく、自分で課題を発見し、解決するという個人練習を重視しています。そういった個人練習が、それぞれの選手が強みを伸ばし、確固たる自己を持って、バッティングや守備などのプレイをすることにつながり、チームの色になっています。

八木 個々の個性を主張するだけでなく、主将の大村がリーダーシップを発揮して、チーム全体を引き締めてくれているおかげで、チームの一体感という面でも自信があります。また、メンタルトレーニングにも力を入れていて、「自分だけではなく、他人にも喜びや楽しさを感じてもらえるような野球をする」という精神を大事にしています。

渡邉千之亮選手

 

―慶應義塾高等学校野球部の部訓でもある「エンジョイ・ベースボール」にも通ずるものがありますね。

大村 そうですね。僕たちは、試合の際に「良い顔をしてプレイしよう」と声を掛け合うことが良くあります。また、お互いに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることも、普段も試合中も意識的に行っています。そのため、どんな苦しい状況でも、笑顔で声を掛け合って、野球そのものを心から楽しむことが出来ています。何事も楽しんで取り組めば、上手になっていき、向上心が芽生えます。なので、そういう気持ちを皆が持っていることは、このチームの強みのひとつかもしれません。

 

―「エンジョイ・ベースボール」や他人を喜ばせることを重視する「他喜力」など、慶應義塾高等学校野球部の部訓は選手の皆さんの野球魂に刻まれているのですね。部訓と言えば、大村選手率いる慶應義塾高等学校野球部は「高校野球の常識を変える」がスローガンだとお聞きしました。これは、どういったことを目指して掲げているスローガンなのでしょうか。

大村 高校球児として過ごした3年間を、誰もが素晴らしいと認めるような価値ある時間にすることです。人生の中で見たら、この3年間は本当に短い時間に過ぎません。ですが、この時間を振り返ったときに、「本当に成長できたな」と感じられるようなものにしたいといつも思っています。

 

―続いて、春の甲子園や県大会、関東大会から学んだことや見えてきた弱点、それを克服するために試みていることなどについて教えてください。

大村 春の甲子園も関東大会も1点差で負けるという悔しい結果に終わり、1点の重みを学びました。この2つの大会後の練習では、主将である自分からも「この1球で勝敗が決まる」という意識の大切さを発信するようにしています。

八木 接戦で勝ちきれないチームの弱さは、克服できたとは全く思いません。ですが、試合までの1カ月で、強いチームとの練習試合などを通じて、勝つ方法や自信に繋がるものを掴んで、練習などに活かせるようにしたいと考えています。

八木陽選手

―進化し続けるチームですが、現体制で挑む大会は夏の県大会及び甲子園で最後となります。3年生である皆さんにとっては最後となる、今夏の大会にかける思いはどのようなものでしょうか。

八木 自分は1年生の頃からレギュラーとして試合に出ていて、夏の大会は今回で3回目となります。そのため、同期の中でも、悔しい気持ちは誰よりも強いと思います。その一方で、最も夏の大会に慣れている立場でもあるので、落ち着いたプレイを見せて、浮き足立つ仲間を安心させられる存在になりたいです。

大村 何より、後悔したくないです。春の甲子園や関東大会では、初戦負けを経験して、悔しい思いだけが残りました。なので、最後となる夏の甲子園では優勝して、チーム全員で笑って終わりたいです。

 

―今夏の大会を終えると、3年生である皆さんは、後輩の選手に大切なチームを受け継ぐことになりますね。皆さんは後輩の選手の成長を間近で見てきたと思います。そんな皆さんが、自身の引退後にチームにおいて大きな役割を果たすことを期待している、注目株の選手を教えてください。

八木 2年生の鈴木 佳門選手です。彼は左ピッチャーで、身長も高く、中学時代から「すごい球を投げる」と評判でした。怪我をしてしまって、思うように投げられない時期がありましたが、今年に入ってからはかなり良い球を投げていて、自分にとっても頼もしい存在です。今夏の大会でも、彼が活躍する姿を楽しみにしています。

大村 後輩たち全員がとても上手なので、いつも感心していますし、期待をしています。その中で、強いて名前を挙げるならば、2年生の加藤 右悟選手です。天然なキャラクターではありますが、野球が本当に大好きで、誰よりも貪欲に努力している姿をずっと間近で見てきました。現在のチームでも活躍してくれていますが、チームの先頭に立って更なる高みにチームを導く存在になる素質が彼にはあると思うので、今後彼の努力がますます花開いてくれることを期待しています。

 

―いよいよ夏の大会が間近に迫ってきた今(6月12日に取材)、今大会に参加するチームへの自信はありますか。

八木 自信はあります。主将の大村を中心に、チームが生き生きと野球を楽しめていると思うので、その雰囲気を保っていければ、甲子園でも勝つことができると思います。まずは、そのための勢いを神奈川県大会でしっかり付けたいです。

渡邉 実力を十分に発揮できれば、強豪にも負けないという自信があります。だからといって、春の県大会での優勝で慢心せず、チャレンジャー精神を忘れずに、試合をしたいと思います。

 

―最後に、慶應義塾高等学校野球部を応援している皆さんにメッセージをください。

大村 皆さんが「野球部頑張れ」と声をかけてくれることが、大きな力になっています。自分たちが思い切りプレイできるように支えてくれる皆さんに恩返しをするために、一生懸命戦っていくので、これからも応援よろしくお願いします。

大村昊澄主将