「ロスフラワー」、それは生花店や式場などで短い役目を終え、まだ美しいうちに廃棄されてしまう花のことだ。
株式会社RINは、廃棄予定の生花を回収し、ドライフラワーを作っている。今回は、RINの中で子どもや学生にロスフラワーを広める活動をしている「花育部」のメンバーで、ロスフラワーに新たな命を吹き込む「フラワーサイクリスト」の3人に話を聞いた。

ロスフラワーで作った作品

花育部の活動

ロスフラワーを広める活動をする中で、「花の飾り方がわからない」や「家に花瓶がないから飾れない」という声をよく耳にするという。「花をより身近に感じられるように、花は水が入ればどんな入れ物でも飾れるということや、ちょっとしたワンポイントで長持ちさせられることを伝え、今後に繋げられるようなワークショップを心がけています」と語るのは花育部部長の中村佳世さん。

ここで中村さんに、花を長持ちさせるポイントを教えてもらった。水の温度が上がると萎れやすいため、夏の暑い時期には冷房が効いている部屋で、冷風が直接当たらないところに飾るのがポイントだ。水に氷を1つ入れるのも効果的である。他にも、数日に1度茎の先端を切ることで切り口が新しくなり、水を吸い上げやすくなるという。また、定期的に花瓶を洗ってヌメリを取ることでより長く楽しむことができる。花の種類によっても育て方は異なり、茎が硬くツルツルとしている花は水を多めに入れてもよいが、ガーベラなど茎が柔らかい花は水を少なめに入れるのが長持ちの秘訣だ。ガーベラ1本を飾る場合は、5mm程度の水で十分だという。特に大切なのは、毎日水を替えることだ。「毎日実際に花に触れてお世話をしてあげることで、花が可愛くて愛おしく思えてきます」と中村さん。
ロスフラワーを減らすためにも、気に入った花を1本でも購入して「花のある生活」を楽しんでほしい、と3人は口を揃えて話していた。より多くの人が1本でも多く花を買うことで、1本あたりの価格も抑えられ、さらに手に取りやすくなるのだ。

「花のある暮らし」の効果

花には人間のストレスを和らげ、幸福感を与えるはたらきがあるということが科学的に証明されている。花を見ることで、「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンなどが分泌される。さらに花のある部屋に身を置くだけでも副交感神経が優位になるため、リラックス効果も期待できるのだ。

コロナで拍車がかかる花のロス

花農家はイベントに合わせて花を育てているため、結婚式などのイベントが急遽中止になってしまうと花が全てロスになってしまう。またコロナ禍で「おうち時間」が長くなったことで、花を購入したりガーデニングを始めたりする人は増えたものの、日常が戻りつつある中「花のある暮らし」を継続している人は多くないのが現状だ。
「コロナで先行きが見えない不安の中、道に咲く花に元気づけられました。どんな時でもお花は変わらず咲いてくれて、そこで初めて花の生命力と癒しを感じました。」と語るのは松島いずみさん。コロナ禍で花の魅力を再認識し、RINのスクールに通いフラワーサイクリストになったという。
コロナ禍でテレワークが続いた最中、自宅のデスクに飾った花に心が和み、10年ぶりに花に関わる仕事をしたいと思い立ったという荻野かなえさんは次のように語った。「ただ綺麗や素敵という理由だけではなくて、今度は何か社会に役立つことのために始めたいと思いました。ワークショップを通して子どもたちに、自分で知恵を絞って花を慈しむことで、最後まで花の命を生かしてあげることができるという経験をしてもらいたいですね」
フラワーサイクリストの思いが詰まったワークショップに参加した子どもたちは、真剣な眼差しでロスフラワーを使った押し花スタンプカード作りを楽しんでいた。「子どもたちは私たちが想像できないような可愛らしい作品をパパッと作ってくれるので、その感性にいつも驚かされます」と中村さんは笑顔で話した。

子どもたちがロスフラワーで作った作品

自分が心動かされる道へ

「ドライフラワーを作る工程には、障害のある方でも取り組みやすい作業が多いと思います」そう語るのは松島さん。今では、福祉事業所の方たちとロスフラワーを使った商品を作る活動を行っているという。「私はこの年になって、ようやくやりたいことが見つかりました。自分の頭で考えたことって割と実現できるのだと最近になって思うので、ぜひ行動してほしいです」
荻野さんは「人間は機械じゃなくてやっぱり心がありますから、自分の心が動くことに情熱と時間を費やすような人生は、きっと幸せなんじゃないかなと思います」と話す。 
以前は幼稚園教諭として働いていた中村さんは、現在「子どもたちとの関わり」と「花」という、好きなこと同士を掛け合わせた仕事を実現させている。「まずは自分の好きなことや得意なことを知ってほしいです。それをお仕事につなげたり、休憩やリフレッシュのときに役立てたりしてもらえればと思います。それと、就活などでちょっと心が疲れたときは花を見てくださいね」と笑顔で締めくくった。

花育部のフラワーサイクリスト(右から松島さん、中村さん、荻野さん)

(堀内未希)