東急駅と「のるるん」

日吉キャンパスに通学する塾生には馴染み深い日吉駅―――。その改札横の窓口に、密かにファンを持つキャラクターがいることはご存知だろうか。東急線キャラクター「のるるん」である。改札前から駅事務室を覗く小窓には、「のるるん」のぬいぐるみが座っている。

実は、日吉駅に限らず、東急電鉄の多くの駅には「のるるん」のぬいぐるみが置かれている。更に、駅によっては毎月季節に合わせて「お着替え」がされているのだ。クリスマスやお正月、バレンタインや卒業式など、その装いは多種多様で、どれも非常に可愛らしい。日吉駅には、入試シーズンにかけて受験生応援の装いをするなど、慶應を意識したものも登場する。

昨年のクリスマスで出た着せ替え。サンタさんとトナカイさん
今年の3月頃に出た着せ替え。
「お客さまを見守る課程」の修了証書が授与されている。

駅員さんに聞く

こうした取り組みは、どのような想いで行われているのだろうか。本紙は、日吉駅の駅員を務める田口駅員と本木駅員を取材した。

駅員の田口さん(左)と本木さん(右)

2人によれば、日吉駅での装飾は2018年から始まったものだという。担当するのは、各駅で利用者に向けたサービスを展開する「販売促進チーム」。今年3月からチームに所属し装飾をするようになったという本木駅員に、毎月どのようにアイデアを出しているのか尋ねた。

「コンセプトは季節のイベントに合わせて決めています。他にその地域に根差したネタを使うこともあって、やはり日吉駅といえば慶應さんになりますね」

これまで担当した中で特に印象的だったのは、6月に出した「父の日」の装飾だという。普段は小窓の前に座る「のるるん」が、当時は背中を向けていた。その周りには、後ろを向く駅員たちの写真が何枚か貼られていた。

6月に出された父の日がテーマの「のるるん」。
背中で語る姿をイメージしている。

「お父さんといえば、”背中”だと思いました。背中で語るってイメージです。そこで、駅員にも背中の写真を撮らせてもらって貼りました。この装飾は、後から日吉商店街の方にも『感動した!』と言っていただけて嬉しかったです」

本木駅員は、こうした駅利用者からの反応も大きなモチベーションの1つだと語る。「装飾がきっかけでお客様との会話が生まれたこともあります。5月は、デザインの元になった車両(5000系)の20周年なので、お誕生日祝いの装飾を出しました。お客様から、『誰の誕生日なの?』と尋ねられ、『のるるん』のお誕生日なんですよ』と答える場面もありました」

「のるるん」のお誕生日祝い。プレゼントに喜んでいるように見える。(提供=日吉駅)

また、TwitterなどのSNS上には季節ごとのお着替えを心待ちにするファンもおり、反応を楽しみに「エゴサ」することもあるそうだ。

受験生応援のるるん

2021年の受験生応援装飾についても聞いた。例年受験シーズンには応援装飾を作っているという。2022年は、「合格」のハチマキを巻いた「のるるん」が赤本を前に勉強していた。赤本の横に置かれた用紙には、「きっと良い結果になるよう祈ってるよ。いつも応援してるからね。諦めないで!自分を信じて!君ならできる!試験頑張ってね」(I hope you will have good results. I’m always here to cheer you up. Don’t worry! Trust yourself!! You can do 90 it!Good luck with your exams.)というメッセージ。

今年の入試シーズンに出された受験生応援「のるるん」。
マフラーとマスクで体調管理もしっかり。

こちらは販売促進チームと共に、駅員内で利用者に向けたサービスの情報を共有する「おもてなしチーム」も一緒になって取り組んだものだという。同チームの田口駅員は当時を次のように振り返る。

「受験生の方は、これから日吉駅に通ってくださるお客様になるかもしれませんから、応援の気持ちを込めて作らせていただきました」

「のるるん」の他にも、入試シーズンの日吉駅には駅員さんからの応援メッセージが様々な箇所に見られる。どれも暖かい気持ちになるものばかりだ。

改札窓の「巨大のるるん」

さらに、日吉駅の「のるるん」はぬいぐるみだけに留まらない。いつも「のるるん」は座っている窓口を引きで見ると、なんとそこには「巨大のるるん」が貼られているのだ。

あまりのインパクトで、「これなら見覚えがある」という
塾生もいるのではないか。

一体、これはどのような経緯で誕生したものなのだろう。「あれは私が作りました」と照れ笑いをしたのは田口駅員。2019年、当時の駅長に「窓口をうまくできないか」と頼まれて考え出したのだという。

「(窓口の回りは)上下にスペースあるし、銀色の部分を『のるるん』の腰の部分にできないかな…と思ったんです。最初はを手描きしてラミネートしたものを貼ろうと思ったんですが、『のるるん』ってうまく描くのがまあ難しいんですよね。最終的に、拡大コピーしたものをなぞってアルミで貼って、なんとか作りました」

この「巨大のるるん」も、ぬいぐるみと同様に駅利用者にインパクトを与えているようだ。

「写真を撮られるお客様もいますね。やはり嬉しいです。」

日吉駅と慶應

1934年の開設以来、日吉キャンパスは日吉駅と共に歴史を歩んできた。8月27日から、慶應義塾広報部は東急グループの100周年を記念したポスターを目黒線の各駅に掲示している。

最後に、田口駅員から塾生へのメッセージをもらった。

「慶大の学生さんは、目黒線をはじめ、東横線など各線でお世話になっているお客様です。相鉄線とも繋がって、今後は三田だけでなく湘南台へも行きやすくなります。これからも日吉駅をよろしくお願いします!」

(和田幸栞)