森星さんインタビュー

ファッションモデルとして数々のショーや広告への出演など幅広い分野で活躍している森星さん。昨秋には、日本の伝統工芸や魅力的な文化を、サステナブルやダイバーシティの観点から再構築し世界に発信するプロジェクト「tefutefu, Inc.」を立ち上げた。モデルとしてだけではなく、SDGsにも積極的に取り組む森さんに話を聞いた。本紙への登場は10年ぶりだ。

 

SDGsに取り組み始めたきっかけ

─私生活からサステナブルな暮らしを実践している森さんですが、SDGsに取り組み始めたきっかけは何ですか?

モデル活動の中で国内外のあらゆるクリエイター、デザイナーの方々と出会って、いろいろな思想を持つ人々とコミュニケーションを取っていくうちに、「長く使える物っていいな」と感じたことがきっかけです。モデルは人の購買意欲を掻き立てる仕事ですが、ブランドそれぞれが持ついい面に目を向けて、商品を纏ったり使ったりして発信する責任があります。私は長く使えて愛せる物や、作って私たちの手元に届くまでのストーリー性がある物を世の中に広めていきたいと考えたんです。

─ストーリーとは具体的にいうと?

作り手の想いや、手元に届くまでの過程、背景のことです。そこに共感できるかをとても大切にしていて…。気づいたらいわゆる「持続可能な開発目標」、「SDGs」の考え方につながっていました。また仕事仲間以外にも家族や友達など、周囲に未来を考えながら生きる人が多かったので、今まで出会った人たちの影響は本当に大きいですね。

 

SDGsの軸となるもの

─森さんの考えるSDGsとはどのようなものでしょうか?

SDGsには17個の目標が掲げられていますが、12項目目「つくる責任つかう責任」と17項目目「パートナーシップで目標を達成しよう」が私の考えるSDGsの軸です。モデルとしてさまざまな国に行く中で、自分の国の個性をしっかり把握しておくことが重要だと実感して…。私は父が日本人、母がアメリカ人なのですが、日本で生まれ育っているので、私の個性や武器は日本にあるな、と。そこで日本の地域の特性を活かした物や、手作りの物を選択して買うことを心掛けるようになりました。特に私が注目しているのは、日本の伝統工芸や、自然をリスペクトした循環の形。これらを重視して選択することが、モデルの仕事を通した「つくる責任つかう責任」につながっていると思います。

以前友人と、子どもたちに分かりやすくSDGsを説明するためにはどうしたらいいか、ディスカッションをする場があったんです。キャラクターを用いてそれぞれの項目を説明することができるかや、どういった言葉で伝えたらネガティビティがなく発信できるか、など。ひとつひとつの項目を丁寧に掘り下げた結果、「どの項目も結局は平等を謳っているよね」という結論が出ました。そして特に「平等」を表しているのが17項目目だと思ったんです。人と人とのリレーションシップ、派生する自然を大切にする、周囲の人に感謝する、パートナーシップを大切にすることって、そんな身近なところからできていて…。まさに17項目目がSDGsの要ではないでしょうか。そこから始まりそこで完結する気がします。

─SDGsのそれぞれの項目を掘り下げたことがなかったので、その大切さに気づかされました。

ひとつひとつ捉えるとさまざまな疑問が生まれるんですけど、それは正直な気持ちなので、まずは考えることが重要だなと思います。

─「平等」って難しいですよね。

そうなんです。「平等」とひとくくりにするのはとても乱暴なことで、無理があるようにも思えます。以前、プラン・インターナショナルというNGO団体の方たちとカンボジアや、フィリピン、ネパール、ベトナム、インドネシアなど発展途上国に足を運ぶ機会がありました。そこでそれぞれの地域の特性、個性を見て、一概に先進国の方がいい、豊かだ、とは言えないなと。それらの国には、先進国にはない豊かさがあります。村ではコミュニティが育まれていて、狭まれているからこその豊かさもある。すべて平等にしてしまうと、国の個性や特性がなくなってしまいます。それは人にも言えることで。「平等」って本当に難しい。

 

学生でもできるSDGs

─学生にとっては敷居が高いサステナブルな暮らし。学生でも気軽に取り組むコツはありますか?

私が学生だったら、という視点でお話します。私は、かわいい、楽しい、おしゃれ、ときめくなど自分にとってポジティブな要素がないと、取り組むこと自体苦しくなってしまうタイプ。そうなると人にポジティブバイブスを受け渡すことができません。それってアンハッピーじゃないですか。人それぞれSDGsに取り組むモチベーションは違いますが、私は「楽しい」が行動の源になっています。それは学生時代も今もそうです。たとえば、普段私は愛着のあるマイカップを持ち歩いていますが、それが自然とごみを減らすことに貢献している。それがルーティンになり、人にも楽しそうにシェアできる、という最高のサイクルです。おまけに、愛着のあるものを身の回りに置くことによってマインドフルネスにもつながります。

学生の頃は自分が何に長けていて、何が行動を起こすモチベーションとなるのかを探る時間がたっぷりあります。学生の皆さんには自分のやる気の源を見つけて、身近なところからSDGsに取り組んでほしいですね。

 

tefutefu, Inc.の設立背景

─tefutefu, Inc.を立ち上げられたのは、どのような経緯からですか?

コロナ以前は仕事を通して国外を見る機会が多かったのですが、コロナによってピタリとなくなり、日本の内側を見るきっかけが増えました。世界ではサステナブルやSDGsがトレンドのように言われる世の中になっています。ですが日本を見てみると、自然を活かし無駄を少なくした、合理的な暮らしから生まれるものづくりというものが昔からあって。伝統的ですが、日本なりの循環として、世界から見たらすごく最新だなと。でも、このような暮らしに根ざした工芸が、いつしかすごく遠いものになってしまっているところに疑問があって。そこで、伝統工芸をコンテンポラリーに再編集することで、自分たちの暮らしの中に先人たちの知恵が混ざり込んだら、気持ちが良く、世界的にも取り入れられる「循環の形」を日本から発信できるのではないかと思い、tefutefu, Inc.を始めました。

森さんのインスタグラム(@hikari)より

 

塾生へのメッセージ

─最後に、どのような学生だったか、そして塾生に向けてのメッセージをお願いします。

私は、中国文学を専攻していたのですが、お恥ずかしい話、卒業のための勉強、という感じでした。なので「大学でこれを学ぶぞ」というビジョンがあったら、もっと有意義に過ごせたなというのが正直なところです。基本的にあまり考えずに飛び込むタイプで、とりあえずチャレンジしてみるのは、学生の時から変わらないかもしれません。会社を始めてみて、成功するためにはゴールとビジョン、そしてそれに向けてどうスキルアップするかが、どれほど大切かを思い知っています。学生の時からビジョンを持つ方が、なりたい自分になれることにつながるのではないでしょうか。

 

 

(横山真緒・後藤ひなた)

 

【プロフィール】

森星(もりひかり)

ファッションモデル。慶應義塾大学文学部卒業。

モデルとして国内外で活躍。2015年にプラン・インターナショナル・ジャパンのアンバサダーに就任。

体にも地球にも優しい生活や日本の文化、伝統工芸などを発信し、9月に設立した「tefutefu」ではCDを務める。