絶縁体に電気信号伝達 省エネ技術への応用に期待

省エネ技術への応用に期待

理工学研究科修士課程2年の梶原瑛祐氏らの研究チームが絶縁体に電気信号を流す方法を発見した。研究成果は3月11日付の英国科学雑誌ネイチャーに発表された。新たな省エネルギー情報伝送手段としての応用が期待される(学年は論文発表当時)。
 絶縁体は電流を通すことができない物質だが、研究チームは「スピン」と呼ばれる電子の自転に似た運動に注目。電気信号をスピンの状態に変換し、磁性ガーネットと呼ばれる絶縁体に注入。電子自体は移動させずに、1㍉程度の長さにわたって電子の回転状態を波のように伝えた後、再び電気信号として取り出すことに成功した。
 電化製品が次第に熱くなるように、電流として電子自体が物質中を移動して伝わる時は超伝導現象を利用した低温の特殊な環境を除いて、電気抵抗によるジュール熱に伴うエネルギー損失が発生する。こうしたジュール熱による発熱が情報通信分野において、データ容量の大型化などに対する障害となっている。
 しかし今回発見された方法では、絶縁体中を電子そのものが移動しないためジュール熱が発生しない。集積回路に応用すれば通常の銅線と比べて熱によるエネルギーの損失を8割程度軽減できるという。
 梶原氏は塾生新聞会の取材に対し「今後はさらに効率の良い物質(絶縁体)を探すことが重要な研究課題になると考えられる。物質によってはさらに長い距離にわたって、例えば1㌢以上の距離にわたって電気を流すことのできる物質があるかもしれない」と語った。
 研究は科学技術振興機構(JST)の基礎研究事業の一環として、東北大金属材料研究所教授で元慶大専任講師(現訪問教授)の齊藤英治氏の指導のもと、東北大金属材料研究所の前川禎通教授と高梨弘毅教授、FDK社との共同で行われた。