6月20日は、「世界難民の日」だ。アフリカ統一機構難民条約の発効日を記念した「アフリカ難民の日」からの改称が、2000年の国連総会で決議された。難民の保護、支援に対する世界的な関心を高める狙いがあるという。

 

高まる難民への関心

特に、今年はロシアによるウクライナ侵攻に伴い、避難民含め難民問題への世界的注目が集まっている。日本政府も受け入れる姿勢を示し、入国した避難民は1000人を超えた。難民条約は、人種や宗教、国籍、政治的意見などを理由に母国で迫害を受けるおそれがある人を難民と定義。日本政府は、国家間紛争からの避難はこの定義に当てはまらないと解釈する。それを踏まえ、政府はウクライナ避難民の「準難民」としての保護を目的に、昨年廃案となった出入国管理及び難民認定法(以下入管法)改正案の再提出を目指す。
昨年改正案が廃案になったのは、スリランカ人女性が名古屋入管で亡くなったのを契機に、日本の入管制度の問題点が露見したからだ。入管職員の不適切発言や、体調不良の収容者に適切な処置を講じなかったことが明らかになった。以来、政府の改正案を「改悪」と指摘する声も少なくない。

 

入管法改正案の論点

今回政府が再提出を目指す改正案の論点は2つ。1つ目は、「準難民」制度の導入だ。現在、ウクライナから逃れた人は、「避難民」として在留資格が与えられ、生活支援を受けている。古川法相は、既存制度が不十分だと主張し、準難民の導入とともに一体的見直しを強調するが、その内容は未だ明示されていない。
2つ目の論点は、改正案において人権軽視が指摘された条項を復活させようとしている点だ。現行法では何度でも可能な難民申請を2回までに限定したうえで、祖国への送還停止を認めない、拒否すれば罰則を科すというものだ。「保護を求めた国へ不法入国したことや不法にいることを理由に罰してはいけない」とする難民条約(第三十一条)に矛盾しており、批判が寄せられている。一方、松野官房長官は4月の記者会見で、「再提出に向けて検討中だ。真に庇護を必要とする方を適切に保護するため、必要な制度整備に努めたい」と発言した。

入管法改正案の再提出が、難民・準難民のさらなる支援に結びつくのか、今後の展望が注視される。

山下和奏