大学生活の自由について語る岡部教授

大学という組織には多くのほころびが存在している。「別に楽しいからいいじゃん」と看過されがちなそのほころびは、一方で学生の心に「大学って何なんだろう」と時に漠然とした疑問を生む。
 多くの学生が騙し騙し受け入れている大学の「今」を様々な切り口から問い直すこの企画。第1回は「大学で与えられる自由」について扱う。
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 なぜ教育の最高機関たるべき大学がこうも自由なのか。急に与えられた自由の中で、学生はどう振舞えばいいのか。慶大の名誉教授である岡部光明氏にお話を伺った。
 「大学がなぜ自由か。これは社会が大学に、時間とお金を投資しているから」と岡部教授は語る。もちろん何の見返りもなく投資するのではなく、これは社会が大学に3つの社会的役割を求めるからだという。
 「1つ目は『研究』、2つ目は『高等教育』、最後に地域社会や政府との連携による『社会貢献』の役割です」と語った上で、さらに「この社会的役割の実現のためには大学に自由を与えるのが一番だということが、歴史の中で経験的に証明されてきました」と続ける。
 これが自由を与える側の思惑として、自由を受ける側はどのようにこれを享受すべきなのか。
 「基本的には、大学が社会から期待される役割に沿うように。そして日本の学生は、そうすることが自分にとっても得になることをもっと知らなければならない」
 アメリカでも学び、教えた経験がある岡部教授は「『大学はモラトリアム』という考え方がアメリカにはない」と話す。アメリカでは授業料のほとんどを学生が自ら稼いで出すことに加え、「学生の仕事は勉強」と学生自身がよく知っているため、一心不乱に勉強するという。
 では学生は、与えられた自由の中で、具体的にどう振舞えばいいのだろうか。教授に3つのアドバイスを頂いた。
 1つ目は、大学時代に夢を確かなものにすること。「夢がある人はそれに向かって邁進すればいいし、ない人は夢を作りなさい」と話す。
 2つ目は、その夢のために、勉強すること。「必ずしも夢そのものではないかもしれないが、勉強すれば近いものは実現できる。また、夢を持たない人に勉強なくして突然夢が出来ることもあり得ない。夢は勉強を通して初めて生まれるものです」
 「大学にはそれらが出来る精神的、時間的な自由があります」と語り、3つ目に重要なこととして、「これは私自身達成できなかったことで恐縮なのですが」とはにかんだ後、「大学時代は熱烈な恋愛もしなさい。恋愛をすることで人生観が変わります」と結んだ。
 4月からの新学期、「今だからすべきこと」を一度考えてみることで、自由の意味合いは変わってくるかも知れない。
         (岡本直人)

3大要素は、夢、勉強、そして恋愛