金平糖さんは、切り絵作家として活躍する現役美大生だ。なぜ彼女は切り絵を選んだのか。その魅力を存分に語ってもらった。

始まりは学校から

金平糖さんが初めて切り絵に触れたのは、中学生の時の美術の授業だ。完成品の繊細さが彼女を魅了した。

作品の販売は、お世話になった先輩の卒業祝いを、自分で稼いだお金で買いたいと思ったから始めたという。作家としての活動を決意したのは、初めて展示会に作品を出したときだ。奥さんの付き添いで展示会に来ていた男性が、金平糖さんの作品に一目ぼれし、帰りがけに購入してくれたのだ。美術に興味のなかった男性の心を動かしたこの経験が、作家としての道に金平糖さんを誘った。

これまでの道のり

高校生のころから、作品をSNSに投稿している金平糖さん。若さゆえに注目を集める一方で、学業との両立は困難だった。

「切り絵と向き合う時間が少ない中、ひたすら切り続けることで技術を磨きました。美大を受験するためデッサンを学んだことで、下絵を描くための力が向上し、作品が大きくレベルアップしましたね」。

金平糖さんは現在大学で、ガラスの加工について学んでいる。この学びを生かし、板ガラスの間に、何層も切り絵を挟んで、接着した作品を作ったという。これからも新たな表現が、次々生まれるに違いない。

金平糖さんはおすすめの道具はオルファ社製ののカッターマットと、刃の角度が30度のデザインナイフだ。抵抗が少なく、すっと切れるマットに、通常よりも鋭利なカッターを使うことで細かく切ることができる。

「紙は厚い方がちぎれにくいと思われがちだが、力が必要で、刃のコントロールが難しく、しわが寄ってしまうこともあります。薄めの紙を、力を入れずに切るのがコツです」と金平糖さんは語る。

こだわりは額縁から

金平糖さんは額縁から作品の構想を練るという。多くの作家が作品を作ってから、それに合う額縁を選ぶが、金平糖さんは反対に額縁を先に購入して、それに合わせてモチーフや色を決める。展示会用の大きな作品は、展示会や、その会場の雰囲気から構成を決め、制作に取りかかる。その後、出来上がった作品に合わせて額縁をオーダーメイドしてもらうこともあるというこだわりようだ。額縁までが作品であり、作品との一体感を何よりも重視するのだ。

紙を切るという作業のみで、豊かな花々を表現するために、さまざまな工夫を凝らしている。まず意識しているのは、多様な種類の紙を、いろいろと加工してみることだ。半透明のトレーシングペーパーや、繊維の柔らかな和紙も作品に合わせて用いる。同じ紙でも、何も着色せずに使うのと、絵の具などで着彩してみるのでは大きくイメージが変わる。

「紙を破ってみても異なる表情が生まれるので、とにかくさまざまな方法を試すようにしている」と金平糖さんは話す。

額装する際には、切り絵を何枚も重ねるようにしている。同じ切り絵でも、1層で仕上げると平面的になるが、2層、3層と分けることで、上の層が下層の切り絵に落とす影の面白さが生まれたり、奥行きが出て、作品に説得力が出たりする。

特に影は作品の一部として重要な要素であるため、どのくらい影が落ちるかを計算して額に入れる。このこだわりによって、切り絵の作品としての魅力がぐっと増すのだ。

切り絵ならではの特徴として、自分の描いた絵に触れることができるということを挙げた。

「紙の中にいた自分の絵が、手の平の上に出てくるといつもうれしくなる」と笑顔で金平糖さんは語る。手の中に、いまにも破れそうで、繊細な切り絵の花が収まっている様子は、不思議さとともに目を奪われる美しさがある。

 

自身の作品への思い

一番思い入れのある作品は『夏の終わり』だ。

「この作品は、初めて売約していただいた作品でもあり、展示で初めて賞をいただいた作品でもあります。当時高校生でしたが、お小遣いを貯めて、大阪まで行って初めてお客様とお話しして、売約いただいたときの感動は忘れられません」と嬉しそうに金平糖さんは語った。

『夏の終わり』

この作品のリメイクとして制作した『秋の始まり』にも強い思い入れがある。『夏の終わり』を出展した展示会は毎年開催されており、昨年久々に同じ展示会に出展することになったため、制作した作品だ。初出展のときと同じコンセプトで、同じ花をモチーフにすることで、成長を感じることのできる作品となったという。

「初出展のときからの成長を感じる」と『夏の終わり』に賞を贈った審査員と同じ方から、賞をもらうことができたという意味でも、思い入れのある作品だと語る。

『秋の始まり』

金平糖さんの新作は、大阪にて開催中の「切り博」に出展している『花一閃』だ。白の切り絵にパステルで色付けをしたり、トレーシングペーパーを何層にも重ねているほか、切り絵がくっきり見える黒の背景ではなく、白色の背景を用いてみたりと、新しいことにたくさん挑戦した作品となっている。

『花一閃』

今もなお進化を続ける若い才能は、とどまるところを知らない。「今後も完成度を上げ、将来的には百貨店での展示や、作品集の出版も視野に入れています」と金平糖さんは熱意にあふれていた。今後の活躍から目が離せない。

 

 

(古田明日香)