【特別インタビュー】佐々木三男ヘッドコーチ・1番を目指すバスケットボールを語る(後編)

佐々木HCは今年のチームを「強い」と言っていたことを受けて、3年前のJBL所属チームの日立に勝利したチームについてと、慶大バスケットボール部、日本バスケットについて語ってもらった。


―3年前、酒井泰滋(=酒井祐典の兄)主将時代も強いと感じましたが。

「あの時は(竹内)公輔がいて、酒井がいたんだけど、ガードが未完成だった。それでも勝てたっていうことは、相手がダメだったんですよ、日立が。外人使えなかったから、試合に出ていなかった日本人がバッと出てきたから、大学の時上手だったとしても、2~3年試合に出てないと実戦感覚が衰えてるから、こっちの速いプレイとか公輔のリング下のリバウンドにやられた。こんな試合に勝ってもあんまり意味がないと思った。日本のバスケットボールは外国人が出てるから、(選手が)育ってないですよ。あれは可哀そうですよ。こっちが強かったらよかったんだけど、あっちが弱かった」

―せっかく大学で頑張ったのに、プロや社会人になって弱くなってしまうのは残念ですね。そこで、日本のバスケが目指すところとはどこだと思いますか?
「僕は時々講習会をやらせてもらうので、そういう場で指摘をするんですけど、プレイの状況判断が全くできてないんです、ナショナルチームは。だから、その状況判断ができるようなバスケットを指導しないと、外国チームには永遠に勝てないですよ。単にアメリカのバスケットだけを追っかけてばかりいても、身体能力とかサイズが違うわけだから、今のバスケットボールが日本人にあったバスケットかっていうと、それは疑問符ですよ。でも、JBLは外国人を2人使ってやっているから、アメリカンバスケットにならざるを得ないんですけど、それを追いかけている限りは、公輔が10人出てこないと外国チームには勝てませんよ。状況判断ができるような指導をしてあげなきゃダメです。

日本のバスケットボールを語った佐々木HC。
日本のバスケットボールを語った佐々木HC。

多くのチームが状況判断を正しく行う練習をしていないから、運動能力だけでやるもんだから、大きい人たちと対峙した時に、通用しなくなる。それを崩す練習をすべきです。そういう状況判断ができる練習をしない限り、韓国にも勝てないし。現に韓国だってこの前のアジア大会8着でしょ?それよりか、日本はもっと弱いのですから。相手が大きかったよね、スピードがあったよね、って終わっちゃう。時々言うのは、オランダがサッカーでオフサイドトラップを作って、アルゼンチンとかブラジルに勝った、30年ほど前。それを編み出した戦術を今はもう、オランダの子供たちに教えてる。日本じゃ未だにJBLがハーフコートでやってる。あたらしい戦術、日本人にあったバスケットを勉強もしないで、上手な外人をやとって優勝しているチームにナショナルチームなんか任せられないでしょ。変革させるためにまずは、ひたすら大学で勝ちますよ。何で慶應が勝てるの?って。状況判断の練習を地道に積み重ねていれば、変えられますよ。ということは、ナショナルチームでも何でそんな細かい練習をするのと言われるくらい練習をしなかったら、到底追いつかないと思っている。だって、慶應でやってるシステムを5年やっても、まだ誰も対応できないんだよ。優勝2回、準優勝1回でしょ。失敗したのは2回しかない。その1回は加藤(07年度主将)が怪我したから上手くいかなかった。もし怪我してなかったら、もっといい試合ができたかもしれない。そういうことを考えると、やっぱり我々の練習は評価されるべきなんだけど、なかなかそうはいきませんね。まぐれで勝っていると思われている。今年も勝ちますよ。慶應のバスケットを気がつかせるために」

―実績を残せば注目もされますよね。
「ただ、うちの学生たちは上で、バスケットはしないからね。それは、ちゃんと将来の人生設計ができるから、勉強もバスケットもちゃんとやるから。バスケットだけで生きようと思わない、思わなくてもいい素材なんですよ。バスケットだけが人生じゃないですと言います。慶應らしいなと思って。今年も声がかかったんだけど、Aチームだけじゃなくて。でも、残念ね、そういうところに入ってくれれば、少しずつバスケット界も変わってくると思うんですが」

―そうやって慶應のバスケが伝わっていくと良いですが、残念ですね。

「もったいないですけどね、それは本人たちが選ぶことなので。まあ、いいんじゃないですか。ただ、話が変な方向に進んじゃいますけど、早稲田がいろんな部で人材をとってるじゃないですか。年間100人くらいね。どんどんたまっていくということは、将来の日本のスポーツ界すべての分野で、早稲田が全部おさえるようになるんじゃない?だから、我々は少ない人材だけど入ってもらいたい。企業スポーツでも。だって、早稲田ばっかりになっちゃったら、面白くないじゃない。年間100人ってことは、10年たったら1000人になる。近い将来、早稲田閥。それは困る。だから、慶應の人材がもっとそういうところに行って欲しいと思う」

佐々木HCは、試合後のインタビューに、いつも試合の分析や選手について話をしてくれる。その姿勢は冷静だが、話の内容からは熱い想いを感じる。今回は、チームの話だけではなく、日本のバスケットについても語ってくれた。“慶大のバスケ”が日本のバスケット界に広がり、浸透したとき、バスケットがもっと日本に受け入れられるスポーツとなるのではないだろうか。そのためにも、まずは、今年も慶大の勝利を見届けたい。

(2009年9月16日更新)
文 阪本梨紗子
写真 阪本梨紗子
取材 阪本梨紗子、金武幸宏、井熊里木