デモとは何か考える

集団的自衛権の行使などを認める安保法案が9月19日に成立したが、その前後は日本全国でデモといわれる反対運動が行われた。その規模や報道の数の多さからも、もはや無関心ではいられない程だ。デモとはなんだろうか。
(阿久津花奈・中原純平)

デモの参加者の中でも、近頃は「SEALDs」を筆頭に若者の姿が話題となっている。どのような学生が参加しているのだろうか。反対運動に参加しているという現役塾生の戸澤鮎香さん(文3)に話を聞き、その現場を探った。

戸澤さんは、「勉強やバイトをする、普通の大学生」だ。法案の内容については「最初は何となく反対かなというほどで、活動に参加するほどの根拠は無かった」という。だが、法案を強行採決しようとする政府の行為そのものに疑問と危機感を抱き、友人の誘いをきっかけに参加した。デモに参加している人は様々で、「逮捕されるような危険な人もいるが、ほとんどはごく普通の人」だという。中には幼い子供を連れた親の姿もあった。戸澤さん自身も実際に参加して、「自分の意見を表現するという当たり前のこと」としてとらえるようになった。

また、日本の警察の規制が強いことも、現場に足を運んでわかったことの一つだという。「装甲車両と鉄柵で厳しく包囲された。すし詰めになっても包囲を緩めないことも多く、柵にきつく当たってかなり圧迫される」

デモ活動以外にも戸澤さんはSNSを通じて、自分の意見を発信している。「学生だからこそ自分の意見を自由に言える。今本当に必要なのは、賛成か反対かをはっきりさせることではなく、意見を交換して知恵を出し合うこと」と話す。

学生に思うこととして、彼女は以下のように話してくれた。「無関心でいることが一番よくない。問題に対して自分の意見を持ち、それを異なる考えの人とも交換していくべきだ。大学はそうしたやり取りをするのにふさわしい場所であるはず」

来年からは、18歳にして選挙権をもつ後輩たちも入学してくる。大学が活発な意見交換の場になれば、その権利もより活かされるだろう。
(中原純平)



海外のデモ現場

難民受け入れへの賛成を表明する人々。 デモはイギリスで日常的な光景だ
難民受け入れへの賛成を表明する人々。
デモはイギリスで日常的な光景だ

国会デモが注目されているのは、その規模の大きさだけでなく、日本に馴染んでいない行為であることも起因しているのかもしれない。デモ活動が日常に根付いている国もある。イギリスのデモ現場を見てきた。

“Refugees are welcome in Oxford! (難民をオックスフォードは歓迎します!)”と群衆が大声で合唱するのが遠くから聞こえる。昼下がりのオックスフォード市内で、私は突然聞こえてきた声に驚きつつも、ひたすら耳を傾けていた。






9月6日のイギリス、オックスフォード。学問の都市として名高い街の中心地には、その日、昼過ぎから多くの人々が段ボール板や弾幕をもって集まっていた。彼らの掲げるプラカードには”Refugees are welcome here(ここでは難民を歓迎します)”の文字。そして口々に冒頭のスローガンを叫びながら、大通りを練り歩いていた。

現在欧州が抱える深刻な課題の一つに、難民の受け入れがある。特に問題となっているのがシリア難民だ。トルコの海岸で難民の少年の遺体が打ち上げられたのを皮切りに、世界各地で難民の受け入れについて盛んに議論されるようになった。

欧州連合としては、難民支援のために多額の寄付金を出資することを決め、ドイツのメルケル首相も難民の受け入れには前向きな方針だ。一方、9月上旬までの段階でイギリスのキャメロン首相は、極めて困難であると難色を示していた。

こうした英国政府の態勢に反対する形で計画されたのが、今回のデモだ。決行日の6日前から主催者がfacebookやツイッターなどで参加を呼びかけ、当日は約2000人もの有志が集うこととなった。

制度や認識に違い

イギリスでは、今回のような平和的手段による抗議活動の権利が法的に保障され、かつ規制は決して厳しいものではない。例えば、集会やデモを実行するにあたり、事前に警察や特別な機関に連絡して承諾を得る必要はない。また、交通を妨げない限り公共の道路上における集会が認められている。

デモ隊を取り囲む街の雰囲気も決して物々しくはなかった。警察の姿はあまり見当たらず、市街の人々の中には、飛び入り参加する者もいた。

デモに参加する人たちの人種や年齢もさまざまだ。父親に肩車をされた状態でスローガンを叫ぶ少女、ゆっくりとした足取りながらも力強くプラカードを掲げる年配の黒人男性、3人並んで弾幕を持ち歩く高校生。

純粋に「違う」と思うことを主張する人々を遠巻きに見るのではなく、自然に受け入れる町の姿があった。
(阿久津花奈)

意見は異なっていい

私たちの身の回りにはさまざまな問題があるが、それらに対して無関心になっていないだろうか。勉強やサークルなど、「大学生だからこそできること」は多々あるが、異なる意見をもつ相手に自分の意思を伝え、ときにぶつかることもまたその一つかもしれない。