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「安保法案」と「学問の自由」 有志らが討論 先月19日に法案成立

シンポジウム参加者と議論を交わす有志の会のメンバーたち
シンポジウム参加者と議論を交わす有志の会のメンバーたち
安全保障関連法案が先月19日に参議院本会議で可決、成立した。これによって、集団的自衛権の行使が可能となり、日本の安全保障政策は大きな転換点を迎えることになる。法案成立を前にした先月の18日、慶應義塾有志の会によるシンポジウム「安全保障関連法案と《学問の自由》をめぐって」 が慶大三田キャンパス北館ホールで行われた。同会は今年8月15日に安全保障関連法案の廃案を要請する声明を発表。賛同する社中の数は先月16日現在、745人となっている。
(川村匠)

有志の会は、発表した声明の中で「立憲主義を尊重しない政府のもとでは、言論の自由、表現の自由、報道の自由、そして『学問の自由』がいっそう抑圧されていく可能性を憂慮せざるをえません」とし、安全保障関連法案の可決が言論統制や大学への圧力につながる可能性があると指摘している。

この草案の作成に関わった文学部の赤江雄一准教授によると「戦争法案などといったレッテル張りを用いず、違憲かどうかも決めつけない文章にすることで、幅広いコンセンサスを得られるようにした」という。

シンポジウムには各学部の教員と塾生が参加した。第一部では声明に対する意見を各自の専門分野から多角的に述べ、今回の安全保障関連法案の成立が与える影響について討論がされた。

この討論の中で、理工学部の高桑和巳准教授は「これは解釈改憲ではなく、解釈を行っていない。百歩譲って解釈が行われているとしても、解釈は与党に専有されている。これは立法権が、行政府である内閣に移動しているのと同じであり、議会を通したナチスドイツの全権委任法よりも劣る手段だ」と述べた。

また第二部では政治をより良くするために、「学問をする人」に何ができるかが議論された。第一部から一貫して論じられた議題が、「知性」についてだ。今年6月に国立大学の人文・教員養成系学部の廃止命令が出されたことや、国会で憲法学者の意見が採用されなかったことなどの一連の安倍政権の方針を挙げ、「反知性主義だ」と批判した。

文学部の尾崎名津子講師は、自身の研究対象である作家の織田作之助の「日本を敗戦国にしたのは自分の頭で考えない国民である」という言葉や坂口安吾の『続堕落論』を引用し、戦中から戦後の民衆の傾向を分析。文学に限らず学び研究することが知性と胆力を得ることにつながると主張した。

経済史を専門とする経済学部の柳澤遊教授は「日本が世界恐慌から脱したとき、国民には満州事変で満州国を建国したからだという意識があった。学者たちは、そこに本当は複雑な経済のメカニズムが働いたからだという真相を知っていたが沈黙してしまった」と指摘した上で、「戦後の講和条約締結の際や安保闘争では、その反省から知識人が意見するようになったが、安倍総理の70年談話はそういった過去の反省が活かされていない上に、多くの国民がそれに賛成している」と訴えかけた。

法案の是非だけでなく、学生団体SEALDsの活動や法案反対派へのSNS上での批判についても議論された。SEALDs参加者に対する匿名性を利用した暴言や、インターネット上での法案反対派への根拠のないレッテル張りなど、日本全体に異質なものを排除する風潮があるとして問題提起された。

理工学部の高桑准教授
理工学部の高桑准教授

可決受け声明

慶應義塾有志の会は、安全保障関連法案が参議院で可決、成立した先月19日に「私たち慶應義塾有志は、学問と教育を重んじる者として、日本という国が言葉の硬直化と思考停止に陥ることを止めるべく、民主主義の基礎である言論、議論による闘いを、これからも継続していきたいと考えます」という声明を発表した。

今月21日には慶大の小林節名誉教授を迎えた第2回討論会を予定するなど、活動を続けていく姿勢だ。

用語解説
【解釈改憲】憲法改正の手続きなしに、解釈に変更を加えることで、憲法の意味や内容を変えること。



【安保関連法案をめぐる問題】
集団的自衛権の行使容認などを盛り込んだ安保関連法案は今国会の大きな焦点となっていた。審議の背景には、日本を取り巻く安全保障環境の変化がある。法案が成立すると、日本の安全保障体制が大きく変わるため、国会前では反対派のデモが開催されるなど世間的にも大きな注目を集めた。


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