富の配分が今後の課題

福澤先生ウェーランド経済書講述記念講演会が先月15日、三田演説館で行われた。この講演会は戊辰戦争の最中という有事においても福澤諭吉がウェーランド経済書の講義を続けたことに由来して毎年5月15日に開かれている。今回は「中国経済を考える―『社会主義市場経済』は続くのか」と題し、慶大経済学部の駒形哲哉教授が登壇した。

「社会主義市場経済」のもと中国の経済成長が続いてきた理由として駒形教授は、中国が豊富な労働力を背景に、外資の技術を積極的に受け入れてきたことを挙げる。また、民間企業間、地方政府間における厳しい競争が経済成長を支えてきたことも指摘した。

駒形教授は今後の中国経済においては「福利厚生をはじめ労働者の環境を整えるなど経済のルール作りが必要になる」と述べた。国内の製造業は好調であり、中国の実体としての経済に不安はない。だが、富の配分を行い、公正な資金の流れを作ることが経済成長を続けるための条件とした。 

また、中国が経済力を背景に国力をつけていることに関しては「孟子の言葉にもあるように中国は覇道ではなく王道による統治を目指していくべき」だとし、今後の行方を見守っていく考えを示した。