一瞬の演技に目が離せない

日吉の協生館の中には50㍍の室内プールがあるが、実は、ダイビングプール(飛込用プール)も隣接している。水泳部には、競泳部門のほかに飛込部門があることはあまり知られていない。部員はわずか6人。人数が少ないながらも、美しい演技には、「仲間同士の支え」があった。

精神面で戦う競技

お話を伺ったのは、飛込部門主将の宮下恭平さん(商3)。18歳まで競泳をやっていた宮下さんは、大学入学後、新たなことに挑戦したいと飛込競技に転身した。始めて3年目であるが、昨年はインカレにも出場した。

飛込競技は高さのある飛び込み台から、技を伴いながら水面に飛び込むスポーツで、技の難易度、美しさを競う採点競技である。そのため、競技時間はごくわずか。数秒間の勝負だ。

入水するまでの一瞬の美しさ。それを求めるために、毎日試行錯誤を重ねているという。しかし、何回飛んでも技が決まらないとき、「肉体的な負担以上に、精神的な負担が大きくなる」と語る。それだけ、この競技においてはメンタルの強さが必要となる。体幹やバランスなど、自分の体とともに精神をコントロールできた瞬間、あの「美しさ」が生まれるのだ。

学内とのつながりも

主に、毎年行われるインカレに向けて日々練習を続けているという。インカレ直後の10月には、自分たちの演技を発表する「エキシビション」も協生館のプールで行っている。そこでは普段練習している種目のほか、2人1組で同時に飛び込むシンクロ競技(シンクロナイズドダイビング)も披露している。

また競泳部門や水球部門、葉山部門(海洋遠泳など海での活動を主体とした水泳部)と合同して、幼稚舎生向けの水泳教室も開催している。毎回、飛込コースはすぐに定員に達する人気ぶりだという。

少ないからこそ工夫

練習について、「ひとりでも欠けると活気がなくなってしまう」と話す。それほど、部員ひとりひとりの存在と責任が大きいのだ。毎回、練習でコーチが指導してくれるわけではない。そのため、部員6人で互いにコーチングし合わなければならない。しかし、「教えてもらうだけでなく、自らも教える」という工夫が結果に結びついているのだろう。昨年のインカレには2人が出場、うち1人は決勝に勝ち進んだ。

一般的に「マイナーなスポーツ」とされている飛込競技。美しさと同時に、危険と隣り合わせの競技でもある。そのため、国内の競技人口は1000人程度とかなり少ない。しかしながら、宮下さんは「競技人口が少ない分、努力次第で全国大会に出場できるチャンスは大いにある」という。また、「飛込をもっと身近に感じてほしい」とも語ってくれた。協生館に行く機会があるとき、一度はダイビングプールを覗いてみたいものだ。   (八島卓也)