伝統産業の新たな可能性 株式会社和える 矢島里佳さん

「aeru」の商品、津軽塗りのコップを手にする矢島さん

子供から大人へ一生物の伝統を

「0から6歳の伝統ブランドaeru」。次世代の子どもたちに日本の伝統を伝えようと、乳幼児向けの伝統産業品を開発、販売している。株式会社「和える」を立ち上げたのは慶大法学部を卒業したばかりの矢島里佳さん。彼女を起業に駆り立てた原動力は何なのだろうか。

矢島さんが伝統産業に注目したのは大学生のとき。伝統産業に携わる職人を紹介する記事を大手旅行会社の雑誌で連載していた。その時痛感したのが「伝統産業の衰退」だった。

「こんなに魅力的なのにどうして注目されないのだろう」。伝統産業が好きだという矢島さんは疑問に思ったが、「今の若い世代は幼少期に伝統産業に触れる機会がないからだ」と気づいた。伝統産業のことをよく知らないから興味をもたず、結果として衰退していく負の循環がそこにはあった。

転機が訪れたのは2010学生起業家選手権(東京都主催)への出場。見事優勝し、優勝賞金で株式会社和えるを起業した。

これまでは、需要がないため伝統産業の職人たちが新しいことに取り組むことは難しかった。しかし、「子ども向けの伝統産業品」という新たな市場を生み出したことで、素晴らしいモノが生まれていることを実感していると矢島さんは話す。

「aeru」の商品は乳幼児の使いやすさを大事にしている。矢島さんによると「0から6歳というのは可能性のある世代。だからこそ、その時から一生使えるデザインと機能性を追求している」と言う。例えば、写真で矢島さんが手にしているのは「青森県から津軽塗りのこぼしにくいコップ」。2歳児がしっかりと掴める作りになっているが、大人になってからはぐい飲みとしても使える。

また、「aeruの食器を使ったら子どもの好き嫌いが治った」という顧客の声を聞くこともあり、「本当にお目の高いお客様というのは赤ちゃんだ」と矢島さんは嬉しそうに話した。

乳幼児向けの伝統産業品という新しいジャンルを切り拓いた矢島さん。伝統産業品というと高齢者向けのものというイメージが強いが、日本の伝統産業を盛り上げるためには「若い世代に知ってもらうことが大事」と語った。また、幼い頃からホンモノの伝統産業品に触れられる環境で育つことで感性も磨かれるという。この新しいジャンルには、今後の発展に期待される。(草尾依里子)