慶大先端生命科学研究所は、米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究所と共同で、宇宙線の耐性メカニズム解明のための研究を開始したと昨年11月16日に発表した。
宇宙線は宇宙から地球上に降り注ぐ放射線で、人が大量に浴びるとDNAなどの分子が破壊され、細胞ががん化することが分かっている。
NASAエイムズ研究所のリン・ロスチャイルド教授のグループは紫外線耐性能の高い菌を数種発見した。病原性のない土壌微生物で、高レベルの紫外線を照射されても死ぬことがないという。その色素が紫外線耐性に重要な役割を果たすと考えられている。
慶大は紫外線を照射する前後で変化する代謝物を網羅的に測定するメタボローム技術を利用。色素の紫外線耐性メカニズムとその生合成経路を解析する。これを宇宙線にも応用し、将来的に宇宙での有人探査において宇宙線からの人体の保護が期待されている。
冨田勝所長は「宇宙においてだけでなく、地上の人間を宇宙線や放射線から守るためのヒントが得られるのではないかと期待している」と話した。