[関東大学ジュニア選手権リーグ戦 詳報]雌伏のとき~蹴球部・帝京大学戦リポート

9/13(土) 帝京大学グラウンド(東京都日野市)
13:15 Kick off ● 慶應義塾大学C 19-38 帝京大学C ○ (練習試合)
15:00 Kick off ● 慶應義塾大学B 25-33 帝京大学B ○ (関東大学ジュニア選手権リーグ戦)

9/13。JR新宿駅から京王線に乗り換え約40分、聖蹟桜ヶ丘駅に到着。今回は、関東大学ジュニア選手権リーグ戦(※)、つまり各大学ラグビー部B(サブ)チームのリーグ戦取材のため、八王子にある帝京大学グラウンドにやって来た次第だ。

暑い。とにかく暑い。茹るような暑さだ。この日は、太陽がこれでもかというくらい照りつける、残暑厳しい一日だった。試合前、練習のため施設に向かう選手たちも皆一様に「ヤバイね、この暑さ」「(体力)もたないって」と口を揃えていたほど。取材を敢行すべくグラウンドの中で試合開始を待っていたら、既にして汗が噴き出す。下が人工芝なので、余計に暑さを感じてしまうのもあったかもしれないが。

閑話休題、今年度の関東大学ジュニア選手権リーグ戦、慶應義塾大学Bチームの初戦の相手は、帝京大学Bチーム。長野・菅平での帝京大学A(レギュラー)チームとの練習試合(8/19、●7-15)については、前回の記事でも述べたので繰り返しは避けるが、少なくとも、人間苦い記憶の方が一層、脳裏に焼き付いて離れないというのは間違いなさそうだ。帝京大学グラウンドに向かう京王バスの車内でも、再び蘇る雨中(うちゅう)の記憶。「雨、スリッピーなグラウンド、レフェリーの質」(林雅人監督)等、様々な要因が重なっての敗戦だったが、負けは負け。因みにあの日、Aチームの試合後、会場を移して行われたBチーム同士の練習試合(8/19、●21-24)も、僅差ながら帝京大学に敗れている。今回グラウンドに立つBチームの選手たちには、早速菅平のリベンジを期すチャンスが与えられた訳だが、彼らに「やられた」という嫌な感覚、そのあたりの苦手意識が残ってないか、少し心配だ。ただ、そういった敗戦の苦い記憶を払拭するには、勝利しかない。天気同様、スカッと勝って、今後の戦いにも弾みをつけたいところだ。

(※)「関東大学ジュニア選手権」とは、各大学のBチーム同士が対戦する選手権のこと。慶應義塾大学蹴球部Bチームは今年度、カテゴリー1(慶應・早稲田・明治・東海・帝京・流通経済の6チーム)に所属。まずは、リーグ戦5試合を戦い、ここで1~4位に入れば「グレード1」と呼ばれる決勝トーナメントに進出する権利を手にすることができるが、もし5 or 6位になった場合はカテゴリー2の1 or 2位のチームとの入れ替え戦に回ることを余儀なくされる。

まずは、関東大学ジュニア選手権の「前座」として、13:15から両大学Cチーム同士の練習試合が行われた。前半、慶應はCTB澤野浩正の先制トライ、FL柴田翼の渾身のトライなどで、12-14の2点ビハインドで折り返す。だが、後半は完全なる帝京Cペース。Cチームとはいえ、肉付きはAやBとそれほど遜色ない帝京CチームのFW陣に圧倒されるシーンが徐々に目立つようになる(キック主体でFW戦に持ち込もうとする姿勢は、AからCまで共通しているようだ)。ラインアウトが乱れ、マイボールのスクラムを幾度となくターンオーバーされる始末。相手のFW陣に対抗しようと、後半頭から長身LO南善晴を投入するなど慶應も策を練ったが実らず。結局19-38と惨敗を喫した。

Cチーム同士の練習試合の直後に行われた、関東大学ジュニア選手権。15:00のキックオフ直前、帝京側は部員総出で長い「花道」を作り、試合に出場するBチームの選手たちを激励する。なかなか粋な計らいだ。慶應はというと、特にこれに触発されるようなこともなく、いつもどおりの円陣のみ。両大学Aチームの選手たちもグラウンド内で見つめる中、果たして結果や如何に。

前半、慶應が試合の主導権を握る。この日FBで先発出場した仲宗根健太は、持ち前のキック力でエリア挽回に大きく貢献。ハイパントも高さ十分、自身得意のポジションで躍動した。FW陣も帝京の圧力に屈せず、接点での強さも見せた。幾度となく相手のミスを突き、前半は20- 7とリードして折り返すも、後半は一転、帝京の縦の突進、横の揺さぶりに耐えられず、守備網が決壊。最終的には、25-33と不本意な結果に終わった。

試合後、林監督に話を伺う。「(Bチームについて)前半は、自分たちのプレーに集中できていた。持っている力以上に良い出来だったと思う。スクラムやラインアウトの劣勢にも上手く耐えていたのだが…。自力では相手の方が上なんだなということが分かった」。加えて監督が指摘したのが「経験の浅さ」だった。象徴的なシーンがある。後半ロスタイム、ラストワンプレーで慶應がこの日4つ目のトライを決めた。ただもう時間が無いことは明白で、トライを決めた選手は焦ったのか、即座にボールを拾い上げると、急いでコンバージョンを蹴った。だが、距離にして1~2メートルほどの距離の、しかもゴールポスト真正面からのキックをなんと外してしまったのである。このまま試合は終了した。

ここで注目したいのが、関東ラグビーフットボール協会が策定した、関東大学ジュニア選手権リーグ戦の勝ち点に関するルールである。(a) 勝利したチームには4点(b) 引き分けの場合は各チームに2点(c) 負けたチームには0点(d) また、ボーナス点として①7点差以下で負けたチームには1点②4トライ以上のチームには1点。林監督が注目したのは、この(d)の部分である。最後のトライがこの日4つ目のトライだったので、②の部分はクリアした。これで、もしあのコンバージョンキック(2点)が成功していれば27-33で6点差、①の部分もクリアし、勝ち点2、つまり引き分けと同じだけの勝ち点を得ることができていたのだ。もちろん勝負に「たられば」は禁物なのは承知しているし、「最高の負けを目指して試合をしているわけではない」(林監督)のだが、このコンバージョンキックの直前にも、ゴールポスト付近のペナルティキックを2本連続で外すなど、試合のマネジメントの部分で考えさせられることが多くあった。リーグ戦は、残り4試合。この点の修正も、次回以降に期待したい。

BとCの試合取材を通じて感じたこと。Bチームの試合後、林監督も認めた通り、セットプレー(スクラム・ラインアウト)の劣勢は否定できない。春季フィットネス・ストレングスに注力して培ったFWの力も、相対的に見ればまだまだ。今回、帝京の優位は誰の目にも明らかだった。だが、収穫もあったのではないか。個人的には、Cチームの前半2個目のトライの直前のシーンと、Bチームの前半戦にヒントがあると考える。まずは、Cチームの前半2個目のトライの直前のシーン。帝京に逆転され、流れを相手に持っていかれそうになったとき、2・3回連続して低く鋭いタックルがビシーっと決まった。相手がタッチラインに逃げ、そのマイボールラインアウトの流れから見事トライが生まれたのである。次にBチームの前半戦。試合開始から積極的なディフェンスを仕掛け、追って追って追い回し、相手のミスに付け込む。珍しく相手モールでのターンオーバーからボールを繋ぎ、トライというシーンもあった。このように、セットプレーの劣勢にはある程度目をつぶって(少なくともマイボールのスクラム・ラインアウトだけは絶対に確保するという方向性)、低く鋭いタックルや執拗なディフェンスを続けて相手のミスを誘い、ボールを奪ったら一直線、素早いショートカウンターを次々と繰り出すというスタイルが、慶應Bチームにはフィットしている気がする。常にボールを動かす「モーションラグビー」にスピードを加えた、そんなラグビーを展開していくのが妥当ではないかと思う。

After Recording 取材を終えて・・・

ラグビーとは、つくづく精神性の競技であって、選手ひとりひとりの闘争の覚悟も、ほんの少しだけの弛緩も、たちまちのうちに集団の隅々まで伝播して、ときに劣勢をはねのけ、また優位をも手放させる。…(中略)。心のスキを突いて勝ち上がり、その心のスキに敗れ去る。緩んでいるのではない。緩んではならぬと言い聞かせてはいる。しかし言い聞かせている時点で、ハートに自然と火のついた挑戦者魂に後手を踏んでいる。(『Number』691号 p.p 90~91より一部抜粋)

これは、スポーツライターの藤島大氏が、昨年フランス(+スコットランド・ウェールズ)で開催された「Rugby World cup 2007」終了後、大会の総括として『Number』誌に寄稿した記事の一部である。現在の慶應の選手・スタッフの心理状態を考察するのに、もっとも適当な文章だと判断し、今回引用させてもらった。

藤島氏の文章にもあるように、スポーツというのは、心理状態が如実に結果に反映されるもの。団体競技となれば尚更だ。例えば、先週A(レギュラー)チームが関東大学対抗戦初戦で日本体育大学に敗れた(●19-24)時、ある選手は、春季全勝してしまったことが今微妙にチームに影を落としているのかもしれないと語った。春季終了の段階であれだけ精神的に優位に立っていたはずなのに、夏の菅平での練習試合、秋の対抗戦で負けが込むと、途端に春の全勝が「してしまった」という表現に変わってしまうのだ。これには取材する立場の人間としても、若干驚きを隠せないでいる。今年度Aチームが春季全勝したことで、慶應は他大学から一気に追われる立場になった。相手も、慶應に一泡吹かせてやろうと我武者羅に立ち向かってくる。それを軽くいなせる位の精神的な強さが慶應の選手たちには欲しいのだが、実際はまだそこまでの強さは備わっていない。

今回、Bチームの試合終了後、林監督は「無心」という二文字をキーワードに挙げた。「Bチームは前半、無心で試合に臨むことができていた(その結果が前半 20-7でリードしての折り返し)」。実際、この試合に入る前も、選手たちに「無心でやれ」と声をかけたそうである。ただ、ここで藤島氏の文章(心のスキを突いて勝ち上がり~)と照らし合わせて考えてみると、スタッフが試合前、選手たちに「無心でやれ」と声をかけるのも何か違うような気がする。無心の状態を意識的に作り出す。やはり変だ。理想は、選手たちの内なる部分から自然発生的に、それこそ「闘争の覚悟」(藤島氏)がフツフツと湧いてくることではないか。

23日には、Aチームの対抗戦(筑波大学戦、秩父宮ラグビー場)が控えている。前回の記事にも書いた。今回も全く同じ言葉を選手たちにかけたい。「絶対に受けて立つな。慶應はあくまでチャレンジャーだ」。闘争の覚悟満ち溢れ、相手に愚直に全身をぶつけていく。そんな「スイッチが入った」慶應の選手たちの姿を、秩父宮で見たいと強く願う。

(2008年9月14日更新)

写真・文 安藤 貴文
取材 安藤 貴文