慶應塾生新聞会 三田オフィス
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こちら三田探偵事務所 学校の近道を調査せよ

いつも遅刻してしまいます。授業にも、デートにも…。このままじゃダメ男です。どうにかしてください。        (商2男)
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「まさに俺じゃん」と呟くダメ所員T(政2男)に所長A(政3女)が「彼女がいるっていうこと以外はな」と厳しく突っ込む。「とりあえず授業はまじめに出るべきよね。駅から教室までタイム測れば遅刻しないでしょ」とホステスみたいな外見に似合わずまじめな指令。遅刻癖のある所員H(文2男)も眠そうにやって来たので、2人で日吉、三田に分かれて調査開始。タイムだけじゃなくて近道も探して汚名「ダメ男」返上も狙う。
日吉の目標の校舎は昨年、語学でさんざん苦しんだ第3校舎。あそこに向かうというだけで気分が落ち込んでくる。そう、俺も去年こうして遅刻していたのだ。成績表についた「D」は「DAMEO」の頭文字だったのだ。メンタルも鍛えなくては。
改札でストップウォッチをスタートさせ、大学に入り、まっすぐ銀杏並木を通過。人がいすぎて歩きにくい。ボッチの俺は吐き気が込み上げてくる。車道歩いたほうが人少なくて早いな。5月には人が減るだろうからだんだん歩きやすくなるはずだ。
ふと見ると前には、教科書の袋を持って話をしながら歩く1年生の集団。笑われているような気がする。1年後にはお前らも笑われている側になるんだ。そう思いながら中庭に行くと、もっとたくさんの人が。その中に唯一のクラ友を見つける。やつもやはりボッチ。「おお」「久しぶりじゃん」「履修どうした?」「俺もそれとるよ」「ノートよろしく」「いや出席しろよ、ボッチなめんな」「お互いつらいな…」「うん…」
世間話をしていたら第3校舎に着くころには6分もかかっていた。思わぬタイムロス。これじゃまるで去年と一緒だ。
再履のクラ友とも別れたことで「俺は生まれ変わるんだ。再履の英語も遅刻せずに行くんだ」と調査よりも単位への熱い思いがこみ上げてきたが、なんとか引き返し、テイク2。そして、結果は…3分52秒!案外遠い。12時58分に駅についても3限に間に合わなかったわけだ。
今度は、独立館を通って中庭に行くルートを調査。授業が始まったらしく、独立館は空いていてスイスイ行ける。エレベーター待つより階段の方が気持ち的にもだいぶ早いな。果たして結果は…3分22秒。これからは独立館ルートで行こう。
進級した(できた)場合のため、三田も調査するか。晴れて2年になって三田に通うHと共に調査開始。最短ルートは三田図書館の角で曲がらず、まっすぐ大通りまで出るほうが30秒ほど近道だそうだ。あと、三井住友銀行のコーナーはぎりぎりで曲がるのがミソ。タイムアップにつながるだけじゃなく、出会いがしらに銀行の美人OLとぶつかって恋が始まるなんていう夢の展開も期待できるらしい。
妄想に浸っているうちに西校舎に到着。9分もかかっていた。遠いな~。「てか、H歩くの速すぎじゃない?俺、息やばいんだけど」「あー、ヒールの女の子とかはもっと時間かかるかもね」……。それだ!「ちょっとH、ヒールはいてやってみてよ」。所長Aにヒールを借りて、Hにやらせてみた。足のサイズが5センチも違う上になんか周りの視線が痛すぎる。部活帰りのJCが指をさして笑ってきた。笑顔で手を振ると、目を背けて、自分たちよりも速く歩いて行った。我関せずと遠ざかるT。同じルートで12分。意外にも美脚なHが「結局信号しだいじゃない?」と言う。…気付かないふりしてたのに。
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さっそく所長Aに結果を報告。「よくやったわ、これでTとHの遅刻癖が治ってくれるといいんだけど。ま、遅刻癖治したところでとっくに人生自体に生き遅れてるから変わんないわね」。周囲の視線に負けずヒールを履いてまで調査した俺たちは一体…近道の代償に深い虚無感を味わって終わった。