教授が勧める塾生に読んでほしい「この1冊」 法学部政治学科メディア・コミュニケーション研究所所長 大石裕教授

1956年 生まれ。1979年3月慶應義塾大学法学部政治学科卒業、1985年3月慶應義塾 大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了、財団法人電気通信政策総合研究所研究員、関西大学社会学部専任講師、助教授などを経 て、現職、慶應義塾大学法学部政治学科教授、同メディア・コミュニケーション研究所所長、博士(法学)。
1956年 生まれ。1979年3月慶應義塾大学法学部政治学科卒業、1985年3月慶應義塾 大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了、財団法人電気通信政策総合研究所研究員、関西大学社会学部専任講師、助教授などを経 て、現職、慶應義塾大学法学部政治学科教授、同メディア・コミュニケーション研究所所長、博士(法学)。

私が皆さんに紹介したい本、それは外山滋比古の『エディターシップ』(みすず書房、1975年)である(なお、この本は外山滋比古著作集の第4巻に収められ、また 2009年にはこの本の増補版『新エディターシップ』が出版されている。いずれも、みすず書房)。外山滋比古というと、『思考の整理学』(ちくま文庫)というベストセラーの著者として有名で、彼の文章は最近では国語の教科書や大学入試でも頻繁に用いられている。
外山は実に多くの文庫本や新書を執筆している。なかには興味深いものもあるが、しかし総じて私はそれらをあまり評価しないし、勧めもしない。というのも、外山が精力を傾け、自らの考えを周到にまとめあげたのが、この『エディターシップ』に代表される、一連の「編集論」、「読書・読者論」、「忘却論」であり、これらの著作を読まないと、外山の真髄に触れることはできないと思っているからである。例えば文章を書くときに行う「引用」について、外山はこの本の中で「歴史は無意識に行われた引用の蓄積である。・・引用は、苗床から広い土壌へ苗を移すときのように、引用されたこと自体に注目を惹きつけ、それによって意味を強化するものである」(52-53頁)と述べる。また、この本の主題である「エディターシップ」に関しては、「すぐれたエディターシップならば、かならず構成要素のひとつひとつのもっている価値の総和以上の価値をつくり上げ、『雰囲気』をもったおもしろさ、美しさを創出するものである」(181頁)と書く。これだけでもう十分であろう。
文章を読むと、外山が文学、哲学、言語学などに通暁していることはすぐわかる。しかし、外山はそれらの研究成果をそのまま「引用」することはほとんどなく、自分の言葉でわかりやすく、そして巧みな比喩を用いながら書き進めていく。外山は決して既存の研究の枠にとどまろうとはしない。既存の研究の枠を超えた空間へと外山の思考は突き進んでいく。だから、専門書であることを拒絶した、あるいは専門書に背を向けた「専門書」と言えるかもしれない。 しかも本のタイトルも洒落ている。『修辞的残像』『異本論』などなど。このような刺激に満ちあふれた本に出会い、それらを傍らに置けることは幸せである。


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