《熊本特集2018》震災と日常が共存する町で

熊本特集2018

人は痛みを忘れてしまう。それでも震災の傷は、簡単には消えない。

2016年4月14日と16日。熊本で2度の大きな地震が起きた。熊本城の倒壊や阿蘇大橋の崩落など、衝撃的な映像が繰り返し報道されていたのを覚えているだろうか。あれから2年半がたち、時は流れ、報道も少なくなった。熊本の現状を知る手立ては減り続けている。被災地はどうなっているのか。熊本の今を知るために、私たちは1年半ぶりに現地へ足を運んだ。

変わりつつある益城町

被害が大きかった益城町。昨年はまだ震災の爪あとを色濃く残していたが、そこは一変していた。半壊・全壊の貼り紙がされていた、見るからに危険そうな建物はすでに取り壊されている。バス通りから見える景色は一見「普通」だ。それでも道路や橋に残されたゆがみや割れ目に、ここがまだ「被災地」であることを実感させられた。

前回同様、被害が大きかった木山地区にある町役場を訪ねた。斜めに断裂した庁舎の渡り廊下に、空きスペースに建てられたプレハブ。1年半前、通常ならばありえない環境の中で日常が回っていた。テレビに映る避難所の様子とはまた異なる被災地の現実に、言葉を失った場所だ。

しかしそこにはもう建物はなかった。跡地には移転を知らせる看板と、立ち入り禁止のロープがかかっている。敷地の裏側に回ると、隣接する公民館の脇から空き地に近づくことは出来たが、そこはすでに雑草が生い茂るばかりだった。

昨年の12月より町役場は少し離れたところに移転し、仮設庁舎で運営しているという。役場の方にとっての職場であり、地域の中心である町役場だが、落ち着かない状況が続いている。

今を受け入れて、前に進むということ

1年半前から明確に変化したこともある。神社やお墓といった宗教施設が整理されはじめたことだ。前回訪れた際には「政教分離の原則によって、宗教施設には補助金が支給されにくく、復興が遅れている」と聞いていたが、状況は少しずつ進んだようだ。

町の精神的支柱だという木山神宮は、昨年度重要文化財に指定され、災害復旧事業が行われることになった。まだ工事こそ進んでいないが、倒壊したまま放置されていた鳥居などは撤去され、安全は確保されている。境内には新しい絵馬がいくつもかけられていた。定期的に人が訪れている証拠だ。

上:前回の取材時(2017年3月)
下:今回

震災後、墓石が崩れて散乱したままだった寺迫古城公園墓地は、昨年10月に整備が完了していた。真新しい墓石で、画一的に作られた墓地。震災前とは比べ物にならないだろうが、それでも先祖の墓の前で手を合わせられるようになったことは、益城町に住む方にとって前に進む力となるだろう。

このほかにも、仮設の商業施設であった復興市場が閉鎖されて、元あったスーパーが戻ってくるなど、町には日常が戻りつつある。人口も震災前と変わらないままだ。それでも震災後に2度被災地を歩いて痛感したのは、完全な復興への道のりは長すぎるということだ。まっすぐだったはずの道路、仮設住宅での暮らし。日常は回っていても、課題は消えていない。

今年、国内で相次いで災害が起きた。熊本に限らず、過去の震災は忘れられつつある。しかし私たちは、被災地の今に関心を持つことをやめてはいけないだろう。

震災は決して他人事ではない。時がたち、情報も減ってきた今だからこそ、ぜひ一度、被災地を訪れ、自分の目で現状を確かめてほしい。

熊本地震はまだ、終わっていない。
(小宮山裕子)


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