【多事創論】これからの大学教育を考える 早稲田大学総長 鎌田薫氏

【連載主旨】 多事「創」論
「自由の気風は唯(ただ)多事争論の間に在りて存するものと知る可し」「単一の説を守れば、其の説の性質は仮令(たと)ひ純精善良なるも、之れに由て決して自由の気を生ず可からず」。世の中は一つの考えでまかり通っている訳ではない。多様な意見こそが決められた道のない今の時代を生きる我々にヒントを与えてくれるはずだ。福澤諭吉が唱えた自由の気質になぞらえ、広く多くの意見を集めて現代社会の課題を考えていきたい。

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昨年11月の教育再生実行会議で提言された入試制度の改革や、秋入学制度の実施検討、就職活動時期の変更など、大学教育は新たな局面を迎えている。今回、話を伺ったのは早稲田大学総長の鎌田薫氏、元駐米大使の藤崎一郎氏である。現在の入試制度の問題点や大学生に求められる能力とは何か。 (元駐米大使 藤崎一郎氏の記事はこちら

早稲田大学総長 鎌田薫氏

大学を改革して教育を刷新 論理的思考力を問う入試へ

1882年、早稲田大学の前身である東京専門学校は大隈重信によって創立された。現在は世界で活躍する人材の養成に力を入れている。総長の鎌田薫氏は教育再生実行会議の座長でもある。大学改革によって日本の教育、社会全体を変えることを目指している。


点数重視の公平性に疑問 論理力問う入試へ


教育の目的とは自ら考える力、難しい問題に取り組む意欲を育てることである。これらは大学だけでなく、一生をかけて身に着けるものだ。現在のペーパーテストのみの入試では論理的な思考力を試すことが難しい。特に、マークシート形式による試験は「正解は一つしかない」という認識を学生に植え付けてしまう。もっと自由に物事を考える習慣、作法を会得するべきだ。そのためにはもちろん知識も必要。その最低条件を検証するのが達成度テストとなる。

これは大学に進学しない高校生の学習にも効果的だ。達成度テストは高校在学中に全国の生徒を対象に実施されるので、彼らが目標を持つための良い機会を与えるだろう。

複数回のテストは生徒にとって負担となるという意見もあるが、むしろ逆である。一回しか行われない試験の時に大雪が降ったり、インフルエンザになったりすれば次の試験まで一年待つことになる。年に何回かテストを受ける機会があれば、そのような心配もなくなる。

日本では誰が採点しても同じ点数になる採点基準や一点刻みの評価が客観的とされ、強固な支持を得ている。しかし、例えば仏のバカロレア(中等教育修了試験かつ大学入学資格試験)では哲学の論述問題が重視される。これが客観的に採点されているとは言い難いが、不公平だという不満は出ていない。「公平性」について考え直すべきだ。点数偏重主義から脱却する契機ともなりうる制度の一つとして達成度テストを検討している。

独創性や才能ある若者を 教育改革はまず大学から

近年、独創的な発想を持つ、特定の分野についてずば抜けた才能がある若者が少なくなってきた。良い会社に就職するために有名大学に行く、大学へ入学するために試験で満遍なく高得点を取らなければならない、という状況が続いてきたからだ。現代の若者にはもっと尖った人がいてもいいのではないか。

日本の学生は世界的に最も勉強しないと言われている。大学入学に全精力を注ぎ、入ってからは勉強しないということでは日本全体にとって損失となってしまう。学生がやりがいを見出せる環境を大学が提供できていないのかもしれない。

こういった現状を変えるためには社会全体で日本の教育を刷新していく必要がある。大学入試が変化すると、必然的に高校以下の教育も変わることになる。大学が先頭を切って改革を推し進めていく。

就職活動時期の適正化を 勉強の成果を重視すべき

3年の12月から就職活動に専念するのは異常。大学を卒業してから自分に合う職を探すのが本来の姿。企業は大学での勉強の成果を見て人材の採用をするべきだ。自分が大学で何を勉強し、どのように成長したのかを学生から示すことができる仕組みをつくっていくべきである。例えば、1年から4年までの学問的成長の過程を克明に記録し、4年間でどれほどの力が身についたかを検証できるポートフォリオシステムを整備する。このような取り組みが進めば、全人的な評価が可能になるだろう。

多様な学生を受け入れ、大学をグローバル化

将来、日本の人口が減ると同時に外国人比率は上昇するだろう。全く異なる文化や価値観の違いを乗り越え、信頼関係を築き、議論する力が重視されるはずだ。日本人が留学生とともに生活することで、互いによき理解者になれば良好な国際関係を築くことを促進できる。多様な背景を持つ学生との触れ合いは自らの関心を広げるうえでも重要だ。教育内容のグローバル化や4学期制導入などを通し、留学生が「来たい」「来やすい」大学にしていくべきである。


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