ゲノムを実名で公開 日本初、解析結果の照合可能に

 環境情報学部の冨田勝教授が、自身の全ゲノム配列を解析し、7月31日より国立遺伝学研究所の日本DNAデータバンクにて全世界に公開を始めた。日本人が実名で個人ゲノムを公開するのは初の事例となる。海外では、DNAを発見してノーベル賞を受賞したジム・ワトソン博士や、ゲノム科学の第一人者のジョージ・チャーチハーバード大学教授が、すでに実名で公開している。

 ゲノムとはDNAに暗号として刻まれた遺伝情報のこと。ゲノム情報の99・9%は人類共通だが、残りの0・1%で個人差が見られ、それが一人ひとりの違いを生み出す。

 個人のゲノム情報が解読されると身体能力や癖、かかる病気などの傾向を知ることができる。また、ある病気の患者のゲノム情報の傾向を探ることで、病気の原因を解明する一助となるため、創薬・医療分野の進歩に貢献できるという。

 これまでに公開されたゲノムはほとんど匿名であったため、解析したゲノム情報に基づく体質や性質の予想と実物の照合ができなかった。冨田教授が実名でゲノム情報を公開したことで、解析結果の照合が可能になり、個人ゲノムの研究、教育のさらなる発展を見込める。

 ゲノム解読は2003年に完了し、さらに技術が革新した現在、数年後には1000㌦で個人の全ゲノム情報が解読可能になるという。

 ただし、ゲノムによりつかめる情報は、絶対的なものではない。例えば、一卵性双生児は全く同じゲノム配列をもつが、特徴が全く同じではない。特徴の傾向がわかるだけだ。今後個人ゲノムが身近なものになっていく上で、誤解を招かないためのリテラシー教育が課題となっている。

 SFCでは春学期に冨田教授のゲノム情報を教材にして「ゲノム解析ワークショップ」が開講され、1、2年生を中心に約40人の学生が受講した。その最終発表会での考察には当たりはずれがあり、学生たちはゲノム情報から予測した冨田教授の体質や性質が、必ずしも本人の実際と一致しないことを体感した。