2023年11月10日、イギリス・ロンドンに195名もの塾員・塾生が集結した。彼らが集まる先は三田会の総会内で最大級の規模を誇る英国三田会総会。中には、宿を取り往復6時間かけて足を運ぶ塾生の姿も見られた。彼らがこれほどの時間や費用をかけて総会に集まる理由は一体何か。英国三田会の川船会長、松田代表幹事への取材と参加した学生への調査を元に、運営者と学生の双方の視点からその謎に迫る。

 

総会規模は三田会最大、英国三田会

英国三田会とは、英国に居住している塾生・塾員、慶大に就業した人を対象にした英国を基盤に活動する組織である。Web会員登録者数は442名(2023年11月時点。Web会員登録をしていない会員を含めると約500名)、そのうち幹事約30名が主体となり企画・運営を行なっている。幹事は、英国に進出している様々な業種から各社数名ずつ、駐在員を中心に、永住者も含めたメンバーにより構成されている。ゴルフコンペや家族で参加できるウォーキングツアー、会員によるサークル主催によるソフトボール大会等のイベントも有志を中心に行われているが、中でも一際盛り上がりを見せるのは毎年11月に開催される総会だ。三田会内では最多の参加者が集い、福引イベントも毎年開催される。

2023年英国三田会総会風景(写真=提供)

 

「強い繋がり」と「思いがけない出会い」英国三田会総会の魅力 川船会長インタビュー

「やはり総会が一番好きですね」

和やかな表情で語るのは英国三田会川船会長。今年で来英歴8年を超える川船会長であるが、英国三田会の総会の魅力に関して「強いネットワーク」と「思いがけない出会い」という2点を挙げた。他の三田会と比べて、英国の方がネットワークを求める動きが多く、関係性が親しく感じるという。

実際、英国三田会は登録者数442名に対し、総会参加者195名と、参加率はおよそ半分近くにも上る。海外の三田会の中では、参加人数、参加率ともに最大級と思われる。英国三田会は卒業生だけではなく在校生や教職員等にも門戸を開いており、多様性を重視している。繋がりの深さと広さが英国三田会の特徴であり魅力の一つだろう。

もう一つ、総会の魅力として突然で思いがけない出会いがあることだと川船会長は語る。

「総会で偶々隣に座っていた方が、学生時代同じ学部且つ同じクラスの女性同期だったんです。こんな偶然なことがあるなんてお互いに本当に驚きました」

大学卒業後、何十年もの年月を経て再びロンドンで巡り会うことには何かしらの縁があるように感じる、と川船会長。総会ではビジネス上の関係だけではなく、旧友、様々なバックグラウンドを持った人々に出会うことができるという。強固で広範囲なネットワークがあるからこそ、普段の生活ではあり得ないような出会いがあるのかもしれない。

2023年MLBソフトボール大会の様子(写真=提供)

 

世界で活躍する先輩に会いに往復6時間、留学生たちにとっての魅力

派遣交換留学生(以下、交換留学生)だけを見ても総会出席率が非常に高い。2023年度、イギリスへの交換留学生は24名。そのうち、英国三田会の総会参加者数は20名弱で、参加率は8割を上回る。さらに詳しく見ると、ロンドン市内の大学に通う学生(6名)の総会出席率は驚異の100%である。ロンドン市内の学生に加え、多くの地方の交換留学生が時間をかけて総会に足を運んでいることがわかる。

彼らが時間・費用を費やしてまでも総会に来る背景には、「グローバルで活躍する慶應の卒業生について知りたい」という強い思いがあった。海外での活躍を夢見る学生が多く、彼らのロールモデルと実際に交流したいという思いと憧れを抱き、遠方から参加していた。

※今年度の総会に遠方から参加した塾生(交換留学生)を対象に、【遠くからでも参加したいと思った理由】と【参加してみて得られたこと・感想】を調査。

 

コロナ後の引き継ぎ、円安・インフレ対応 運営側の苦労 松田代表幹事インタビュー

 英国三田会を運営する上で、代表幹事を務める松田氏はコロナ明けの各種行事の再開とインフレを受けた総会運営コストの削減に苦戦したと語った。企画・運営を務める幹事の多くが駐在員で構成されているため、数年おきに入れ替わる。その都度引き継ぎを行う必要があるが、長年続いたパンデミックでこの引き継ぎに苦労したという。

「コロナ後の幹事約30人のうち、総会を経験したことのあるメンバーは5人ほど。総会以外にも、月例懇親会や他行事も全て新たにやり直す必要がありました」

入れ替わりが激しい幹事構成だからこそコロナ禍のブランクが大きく影響したそうだ。また、現在進行中であるインフレも彼らを悩ませている。円安とインフレが同時進行する中で、会場の場所を変更したりプログラムを変更したりと試行錯誤を重ねているそうだ。参加者への負担を最小限にとどめつつ、満足のいく場を提供するために、アンケート調査などを通して要望に応えているという。英国三田会の魅力の裏には、松田氏を中心とする幹事の方の忙しない努力と苦労があった。

 

塾生へのメッセージ「世界に羽ばたいて!」

多くの塾生のロールモデル、世界を渡り歩きビジネスを行う川船会長と松田代表幹事に、慶大を卒業しこれから世界に羽ばたいていく学生に向けてメッセージをいただいた。

 

「慶應で勉強されている皆さんは大変ポテンシャルのある人材だと感じております。これからも継続的に自分自身を成長させていただきたいです。ただ、その成長過程で、多様性のある環境に自ら身を投げ入れてほしいです。日本もグローバル化が進行しているとはいえ、世界と比較すると均質性が非常に高いように思われます。’Diversity&Inclusion’という言葉はGenderだけにあてはまるものではないので、民族性、宗教など様々な価値観が混在する環境に身を置き、自分を成長させていってください」

川船会長(三井住友銀行 常務執行役員 欧阿中東本部長)

 

「本当に世界に羽ばたいてください!

バブル崩壊後、日本が停滞していたことを痛感します。海外では皆さん物価の高さに驚かれますが、海外が高いのではなく日本の物価が低いのが事実です。しかしそれは、日本の実力不足が原因ではなく、その力を十分に活かせていないだけだと思います。日本、そして慶應卒業生は非常に高いポテンシャルがあります。世界を積極的に渡り合ってこの潜在能力を活かしてほしい、そしてそれが皆さんにはできると思います。そのような機会を見つけて最大限に活用してください」

松田代表幹事(野村インターナショナル Managing Director)

2023年度 ケンブリッジ大学ダウニング・コレッジ夏季参加塾生との懇親会の様子(写真=提供)

 

英国三田会公式ホームページ:https://mitakai.co.uk/

※5月号紙面ではWeb版で取り上げなかった内容も掲載予定です。

 

高梨怜子