「勝っておごらず、負けて腐らず」古野慧さんインタビュー

「昔、試合に勝った日に父親から言われた『勝っておごらず、負けて腐らず』という言葉は今でも大切にしています」

座右の銘を聞くとそう笑顔で答えてくれたのは古野慧さん(政・3)だ。古野さんはJOCオリンピック強化指定選手に選出され、現在はスイスのスキー場でオリンピック出場権を懸けたスキークロスワールドカップに挑んでいる。古野さんのスキーへの熱意に迫るべく、これまでの経験や今後の目標について話を聞いた。

 

○スキーを始めたきっかけ
古野さんは雪国とも言われる新潟県長岡市で生まれ育ち、幼い頃から家族でスキーをすることもあったため、物心着く前の小学校1年生からアルペンスキーを始めていたと話す。自転車を使った競技を経て、最終的に 「スタートが早く、途中から追い抜かれることがない」という自分の一番の強みを活かすことができるスキークロスをメイン種目とするようになった。

 

○悔しさから小さな自信へ
これまでの15年間のスキー人生を通じて、最も高い壁を感じたのは16歳の時に出場したジュニア世界選手権だと話す。その大会は16歳から出場権が与えられるため、古野さんにとって初めての世界規模での挑戦となった。
その時に自分の満足のいく結果が出せず、世界との差をひしひしと感じたと言う。しかしそこで終わるはずもなく、古野さんはその悔しさをバネに「まず同年代には負けない」という小さな目標から徐々に果たしていくことを通じて、悔しさを自信に変えてきた。

 

○自分を強くしたある一つの出来事
古野さんは自身をアスリートとして成長させてくれたのは人との出会いだと語る。2017年12月に行われた大会にて転倒し、靭帯を切ってしまった古野さんは赤羽のスポーツ施設でリハビリに励んだ。その際に、スキーに限らずさまざまな競技のアスリートと親睦を深めることができたのだという。
「多くの人の考え方や練習に対する姿勢を知る機会になったと同時に、自身のそれまでの視野の狭さに気づかされました」
怪我から復活した古野さんは、昨年初めて出場した大学生のオリンピックとも言われる、世界大会において7位と好成績を収めた。
「レースがテレビをはじめとしたメディアや、観客が大勢いる中で行われたのも刺激になりました。オリンピックに近い緊張感のある環境の中で、自分の実力を出せたのは良い経験になりました」

 

○古野流モチベーションの保ち方
スキークロスの練習場が国内に少ないため、1年の半分を海外のスキー場で過ごすという、いわゆる「普通の大学生」とはかけ離れた生活を送っている古野さん。途中で挫折することなく熱意を燃やし続けられる理由を聞くと、「意識せずとも毎年冬に近づけば近づくだけ気持ちが高ぶってくる」と力強く語る。
「スキー場に立つことのできないシーズンオフの時には自分の体づくりに専念している。常日頃から目標を持ち続けることを意識しています」

 

○仲間やライバルの存在
海外遠征が多い古野さんにとって、個人種目であるスキークロスはなおさら個人での戦いをイメージしがちだ。ほかの部員の存在について聞くと、次のように古野さんは語る。
「レース自体は個人で滑る競技ではあるが、大会ごとに滑走コースが違うため、大会の詳細についてはコーチや他の選手との情報交換が必須。そう言う意味で、スキークロスは団体戦であると思っています。またスキーに限らず他競技にて全力で頑張っている周りの人の存在はとても刺激になります」
同じスキークロスの選手であるスェーデンのデイビッドさんなどのライバルの存在や、慶大陸上部OBの山縣亮太選手、タレントとしても活躍する武井壮さんなど尊敬する人の存在も自分の向上心を保つ上で大切にしているという。

 

○これから始まるワールドカップに向けての意気込み
12月上旬から2021年開催予定のオリンピックの出場権を懸けたスキークロスワールドカップは「雪上の格闘技」とも喩えられるこの大会は年間13戦行われる予定だ。古野さんはこの大会に①予選通過して32人に入ること②その中で勝ち上がりベスト8に入ることを目標に掲げる。

 

コロナ禍で今後の大会の予定など不明確だ。しかしそんな中、古野さんの揺るぎない熱意には、応援したいと思わせる力強さや安心感を覚える。謙虚で、負けず嫌いという自身の強みを生かしたプレーを期待したい。

 

(古嶋凜子)